原題は「メディアを救えー資本主義、参加型資金調達そして民主主義』で、翻訳題名はあまり出来がよくない。僕に限っていえば、ずっとメディア論オンリーの本であって、経済学の本だということに気が付くのが遅れてしまった。本書は、日本では類書が不足しているメディア産業の経済学的分析、そして独自の新しいメディア企業(非営利型のメディア会社)の提起だ。旧来の新聞などの紙媒体中心のメディアは長期的な衰退傾向にある。同時にこのことはジャーナリズムの記者たちの長期的な質の低下、つまりはジャーナリズムの質の低下になっているという。そこをクラウドファンディング型の資金調達を活かして、企業形態を革新し、適切な政府の助成のもとで、メディアの再生をはかるというものだ。
フランスのメディアの状況が中心になっているので日本の方はまた独自の応用が必要になるだろう。ただメディアの「規模の経済」の説明、競争の功罪など、経済学の初歩からメディア産業の特質が簡単に説明されていて非常に便利だ。トマ・ピケティの前書きも簡潔。
- 作者: ジュリアカジェ,Julia Cag´e,山本知子,相川千尋
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2015/06/24
- メディア: 単行本
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