橘木俊詔『課題解明の経済学史』

 橘木経済学史とでもいうべき一書。経済学史独自の深みよりも著者が経済学の歴史の中でどこに興味を抱き、どのように経済学の歴史を再構成していくかというところに面白みを感じる一冊だと思う。

 面白いと感じた章は、第三章「資本主義経済か、社会主義経済か」。マルサス的な生存権と労働権の否定、リカード社会主義、空想社会主義のあたりが面白く読める。

 また第4章のケインズの経済哲学とでもいうべきところを扱った部分、第5章の社会保障の展開を扱った部分はとてもよく整理されていて役にたつところ。最近は、社会保障がなんであるのかさえ知らない人たちが、一部の問題だけに過剰に反応して、制度自体をダメにするのに貢献しているように見えるが、一度、自分たちが普段無意識に依存している政府の活動、社会保障制度の由来を知るのはどうだろうか? そのためにはいい本である。