高橋洋一『図解ピケティ入門』

 池田信夫氏や竹信三恵子氏らのピケティ『21世紀の資本』解説書がでているが正直まったく読む気がおきない。その中にあって21枚の図表をもとに、ピケティの主張をコンパクトにまとめた信頼すべき解説本がようやく出た。まず一番の特徴は、ピケティ自身の図表を利用しながら、「どの数字=データが大切なのか」「どのような数字と数字の因果関係が重要なのか」そして「日本の状況と照らし合わせたときにピケティの主張はどんな意義をもつのか」を実に明瞭に説明していることだ。

 ピケティの『21世紀の資本』を正確に理解するとなると、少なくとも新古典派成長理論や統計データの基本的な読み方を学んでいないといけないが、多くの人にはそんな時間はないだろう。その点で本書は実に効率的にまとめられている。例えば『21世紀の資本』の第一章所得と産出でおそらく多くの読者は挫折するだろう。そこは国民所得勘定の基礎を丁寧にピケティが解説しているのだが、なんでもそうなのだが基礎が一番退屈だ。高橋さんの解説本では、その話題はなんと見開き二ページであっさりと片付いている。さすがにムダがない。池田、竹信解説本よりも高橋解説本が、訳者の山形浩生さんもいうように断然におススメである。