カール・ポランニー『市場社会と人間の自由』

 訳者の若森みどりさんにだいぶ前に頂戴したけどようやく読む。ポランニーを読むのは毎回、ちょっとエイやと気合いをいれないと読めない。ひとつには相性というものがあるんだろうけど。

 本書はともかく難しい。ポランニーの未完の草稿や短文、また『大転換』の重要な最終章「複雑な社会における自由」、またルソー論や自由と技術をめぐる講演原稿などが収録されている。ポランニーを専門にやっている人間ならまだしも初心者にはハードルが高いので、まずは編訳者の解説を先に読むことをすすめたい。できれば本書の主題とかなりかぶっている『経済の文明史』も読んておいたほうがいいだろう。さらに若森みどりさんの『カール・ポランニー』は必読。おそらくこれらの読書経験を積んだうえで本書を読んだ方がいいのかもしれない。

 市場社会というのはインチキである。じゃあ、現実はどうなのかといえば「複雑」(権力や規制とかごちゃごちゃしている)。自分の行った選択がどんな帰結をもたらすかなんてわからない。わからないからおしまいじゃない。その選択の帰結にも責任をもつことが大切。ポランニーはこれを「責任を担うことを通しての自由」といっている。選択の帰結がある程度見通せるような透明な共同体を構築するのも大切だよね。

というのが僕が読み込んだポランニー。

 そして技術の地位(技術的効率性)は、この「複雑な社会」をさらに不安定にしてしまう。技術って自由への脅威。例えば原子力の利用を間違えると人びとの「責任を担うことを通しての自由」を破壊してしまうよね。そもそも原子力の甚大な汚染の前には個人の責任の問題を超えてしまっている。でも原子力も人間は利用してしまうかもしれない。技術的な効率性をほどほどに制御するには費用がかかる。この費用を分担するには、市場社会ではなく(そもそもそんなのインチキだし)、計画的な制御を中心とした社会が必要になってくる。

 こんな感じだろうか。詳しくは若森みどりさんと僕との対談(ここここ)も読まれたい。

市場社会と人間の自由―社会哲学論選

市場社会と人間の自由―社会哲学論選

  • 作者: カールポランニー,Karl Polanyi,若森みどり,植村邦彦,若森章孝
  • 出版社/メーカー: 大月書店
  • 発売日: 2012/05/01
  • メディア: 単行本
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