塚越健司『ハクティビズムとは何か ハッカーと社会運動』

 最近、ネットをみていてしばしば言及されているのが、はるかぜちゃんとこの本の題名になっているハクティビズムだ。はるかぜちゃんについてはまた今度とりあげるとして、本書はこのハクティビズムをめぐる現段階で読める最も包括的で詳細な解説である。特に後半はハクティビズムの最新形態としてのアノミマスをとりあげて、その活動と市民的不服従の概念と照らしあわせ、彼らの活動の社会的意義と方向性を明らかにしようとしている点で、単なる解説書にとどまらず、現代社会論として成立している良書だ。

 ハクティビズムとはハック+アクティビズムの造語であり、明確な政治目的をもって情報技術を用いる活動の総称である。本書は、ハッカーたちのいわゆる「ハッカー倫理」的なもの、60年代のアングラ的風土などにもさかのぼり、いまも注目をあつめるウィキリークスの活動もこのハクティビズムの範疇でとらえなおしている。

 著者の主張の簡潔なまとめはこのリンク先(参照先1参照先2)で読めるのでそれを参照するのがいいだろう。

 アノニマスDDoS攻撃(分散型サービス攻撃:要するに特定のサーバーに多数のコンピューターから一斉にアクセスし、サーバーをダウンさせるなどの障害を引き起こす手法)が、単なる違法であるか、または市民的不服従として積極的として評価できるのか、さまざまな論点を織り込みながら、著者の判断は今後の推移をみるにとどめ慎重である。そして後者への傾斜こそ、社会に受容されるハクティビズムの在り方であると著者は考えているようだ。

塚越氏は以前、このウィキリークスについての本を読んだときにも見通しのよい展望を書いていて印象に残った人だ。本書は辞書代わりとしても手元にしばらくは(ネットは変化が激しいので)置いておくべき本であろう。

ハクティビズムとは何か ハッカーと社会運動 (SB新書)

ハクティビズムとは何か ハッカーと社会運動 (SB新書)