僕が本書で面白く読んだのは、ジャギディシュ・バグワティと浜田先生との討論をベースにした第二部のTPPをめぐる議論である。以下は自分のためだけのメモ代わり。詳細や他の箇所については各自本書を読まれたい。
1) TPPは自由化レベルが大きく、関税撤廃も10年以内に「ほぼ」100パーセント。従来のFTAほどではないにせよ「例外」はある。
2)自由貿易が歴史的にも国民生活を向上させてきた。その理論的基礎としての比較優位の説明(比較優位についてはこの動画参照)。アジアの自由貿易圏の拡大の経済的利益の指摘。小売業、公共事業にも恩恵。「TPPに参加するか、しないかの選択ではなく、TPPに参加して何を選択するか」というゲーム。
3)(アメリカ⇔日本、シンガポール、ベトナムにとって)中国に対する防衛網の意味をもつ。ただし「バグワッティ氏が指摘するように、TPPには注意すべき点もあります。貿易や投資を活発化する点は評価すべきなのですが、制度の統一や不必要な制約を各国に課する点」。「教会」まで一緒にいく必要はない。
4)TPPデフレ論の誤り。この議論は経済状況(金融スタンス)がデフレ許容的を前提にしている。このTPPデフレ論の議論については、この動画の三橋貴明vs田中秀臣&金子洋一&原田泰の議論を参照のこと。
5)TPPで医療は変わるか? 日本の国民皆保険制度が破たんするのではないか?→安倍政権は制度の堅持表明。TPPの対象外(混合診療の解禁、営利企業の医療参入は交渉の対象ではない。米との二国間交渉でもはねのけた)。
6)TPPで単純労働の外国人労働者は議論されてない。ビジネスパーソンの入国・滞在ルールの緩和。
7)日本が力をいれていくべき点。自動車、電機、機械などの関税撤廃ないし削減(例:米国の乗用車関税、トラック関税のケース)。サービスの市場アクセス改善(コンビニ、スーパーなどの越境サービス貿易の規制緩和。海外投資のルール明確化)。農業分野の「守る」工夫の必要性(この議論については、この動画の原田泰、金子洋一さんらの議論を参照のこと)。
- 作者: 浜田宏一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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