経済学史学会(2020年、web開催)、ミーゼス、アロー他

経済学史学会は今年はweb開催だったので、個人的には実によかった。正直、リアルで研究者同士の交流だとか、そこでの報告者の印象だとか、そういうものに価値をおくタイプではないので、報告者の発言とコメントなどがわかればそれでいいと思っている。また所属大学に面倒な研究費利用の申請をする必要もない。

 

今年の学会報告は、二件だけ見た。ひとつは、 尾近弘幸氏(國學院大學)のEternal Validity of “Die Wirtschaftrechnung im sozialistischen Gemeinwesen”: A Centenary Appraisalで、ミーゼスの「社会主義共同体における経済計算」(1920年)の100周年を記念する報告で、これは個人的に社会主義計算論争(経済計算論争)の整理にもなって有難い報告だった。ミーゼスは個人的には苦手にしているのでその意味でも知的な刺激を得たのが嬉しい。

 

もうひとつの報告は、斉藤尚氏(北海道大学)の「ケネス・アローにおける市場の限界」。こちらはアローの一般均衡論や社会選択論の射程を、経済計算論争へのアローの問題意識から再考察していて、資本主義と社会主義とそれとは違うアローの経済制度認識を論じていて、これまた尾近氏の報告ともかなり重なる部分もあり、楽しめるものだった。アローの経済学史的研究はこれからいくつも出てきそうで、グランドセオリー的なものから理論的な考察まで話題が広がりそうで、楽しみな領域といえる。

 

シンポジウムは経済史と経済学史、最新の制度経済学と経済学史の関連がテーマだったが、報告とコメントをみたら参加した気になったので、今回はスルー。

 

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