政府の概算要求組替え基準を読む

 来年度の予算の概算要求組み換え基準を読んで、そのもとになる「理念」ともいえる「日本再生戦略」を読んだときもさっぱりわからなかったのが、その目玉のグリーン、ライフ、農林漁業の「成長戦略」の部分である。例えば、「グリーン」の中味をそもそもの日本再生戦略を読んでみても、簡単にいうと民間がやるべきものがずらずら並び、せいぜい政府はその旗振り役という、これまた産業政策でも意味不明は旗振り効果(シグナル効果)の記述しかない。要するにこんな基本的に民間のやるべき仕事を口実に、各省庁横断的に予算を提出させるというまあ、うまいメシみつけました、みたいな話にしか思えない。

 グリーンの部分を読んだだけで正直げんなりしてしまった。そもそも「計画」に厳密な達成を求めるのはナイーブであるという小峰隆夫氏の指摘はあるが(その通りというか実際、政府はこんな『計画」の検証を事後的にしない)、ナイーブかどうかよりも実際にムダ金が拠出されるだらしない「計画」=言い訳であることが、このグリーン部分をとってもわかる。ちなみにグリーンが最も重点的である。

関連1:•平成25年度予算の概算要求組替え基準について(閣議決定)

関連2:小峰隆夫「3回目の成長戦略をどう評価するか」

小峰氏の論説では、再生戦略のうち「ライフ」部分で、政府しかできない部分の指摘もしている。しかしそれについては具体的目標がない。つまり本来なら民間ができることを遠慮気味??に政府の目的としてかかげ、政府が本来できることは具体性を避ける、という文章である。以下は小峰氏の当該の指摘部分。

再生戦略では、医療・介護・健康関連産業を日本の成長産業とするために、ドラッグ・ラグ、デバイス・ラグの短縮に取り組むとしている。私に言わせれば、これこそが政府が明確な目標を掲げて取り組むべきことである。日本では新薬や医療機器の承認に時間がかかり、コストも高くつくとしばしば指摘されている。このためせっかく日本で技術が開発されても、海外で先に実用化されてしまうようだ。このラグを短縮しようというのが「ドラッグ・ラグ、デバイス・ラグの短縮である。これは政府にしかできないことである。そのために具体的な目標を設定して、人員・設備面での体制を整備していくことが政府の役割である。しかし、この点では再生戦略の工程表を見ても「2020年までに、ドラッグ・ラグ、デバイス・ラグの解消」というだけで、具体的な目標はない。

関連3・日本再生戦略

政権交代の経済学

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