“埋蔵金”はなかったのか?ー答:依然としてある

 
 渡邉哲也さん@daitojimari が、チャンネル桜の経済討論(http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20120710#p1)で、「埋蔵金はなかった」という発言をされてて、かなり気になったので少し調べてみることにした。

 簡単にいうと

 1)埋蔵金はある
 2)民主党政権はそれを有効に使うつもりはない。
 3)「埋蔵金はなかった」とか「埋蔵借金」などは財務省発の詭弁⇒埋蔵金議論を封印して増税シフトを狙っていた(2010年ぐらいから)

 ということである。渡邉さんの発言は、民主党の「バラマキ政策」に持続的に使える埋蔵金ということを今朝ほど注釈いただいのだが、その意味では「持続的」という意味で100年くらい考えるならばそんなものはないでしょう。ただし20数兆円はあるようなのでそれを利用していく、2010年や11年の埋蔵金の発掘実績のように1兆円規模ぐらいなら10数年は使える程度はあるということだと思います。

 また注意が必要ですが、多くの特別会計埋蔵金のもと)の財政構造に特段の変更がないかぎり、一回発掘してもまた「貯まる」でしょう(フローとストックの関係からそれは自明です)、つまり「再発掘」も将来的には可能です。それはそれで問題ですが。

 ただ上記の2)と3)を合わせて考えればいまの政権及び、財務省の影響力が強いいまの自公を含んだ与野党勢力の大半にとっては埋蔵金は埋めなおされてしまったわけです。渡邉さんの意図がどうあれ、「埋蔵金はなかった」というレトリックが独り歩きすると、それは容易に3)のように増税議論を支持してしまう、実体のともなわない宣伝に利用されないかが心配です。

 高橋洋一さんの『バランスシートで考えれば、世界のしくみがわかる』(2010年)はとてもいい本なのでこれをベースにして最近のデータを照らし合わせましょう。いくつも埋蔵金の発掘先はあるのでここでは労働保険特別会計をみてみます。

 この平成22年度の決算書をみると終りのページの方に3つの勘定の合算したバランスシートが掲載されている。これでみると平成22年度の「資産負債差額」は約7兆円(正確には6973952百万円)である。高橋さんの同書によれば、「資産負債差額」が埋蔵金とのことであるので、22年度末の同会計の埋蔵金はこの額になる。

 この埋蔵金のうちどれほどをどれだけ使うか、またそれに伴う法案の策定などは別問題であるが、とりあえず高橋さんの定義による埋蔵金はちゃんとある。

バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる

バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる