国債を「借金」だと単純に理解している人は一般の人のみならず、影響力のある知識人にも多い。もちろんエコノミストや経済学者の中にも少なからずいる。ところで国債を「借金」だと考えてしまう人たちは、なぜか同じ理屈で貨幣を「借金」だとはみなさないようだ。もし国債を「借金」と同じだと考える人がいて、彼らが「借金はすべて返済するのがいい」という理屈を貨幣にも実行するならば、僕はその首尾一貫性を(微笑をうかべつつ)或る意味でご立派だと称賛するだろう。しかしそんな徹底的な「借金」返済論者をいまだかってみたことはない。
(付記)なんと上に書いた皮肉の対象を、僕だと思っている救いようのない人物がtwitterでつぶやいてた! 大笑い。(付記終)
ただし歴史的には存在していることも付言しておく(日本人ではなく、ある意味でいっちゃてる理屈をいけるところまでロジックをつめることができるのはやはり論理性を重要視する国々の住民に発生しやすい)。おそらく国債=「借金」返済論者は、自分たちの拠ってたっている論理も十分に考えているわけでもないのだろう。
ケインズの有名な発言を引用しておく。
「イギリスでは、われわれは所得税の受領書を検査官から受け取るが、すぐにごみ箱に捨ててしまう。ドイツでは、受領書は銀行券と呼ばれ、紙入れにしまわれる。フランスでは公債と呼ばれ、家庭の金庫の中にしまわれる」
ところで国債をすべて返さなくてはいけない「借金」だと単純にみてはいけない見解は、昨日の岩田先生の『経済復興』にもあるが、私たちの共著『震災恐慌!』では後半はそのような見解にとらわれることなく、財政危機の「真相」に迫り、また復興政策は同時に財政危機の回避でもあることを語っている。
正直、私たちの見解は、国債を「借金」とイコールにしている見解が多数派をしめている状況の中では、「例外」的なものになってしまっている。残念なことではある。しかし私たちの著書を少なくとも単純な借金返済論者の意見ではない、セカンドオピニオン、しかも重要な意見として多くの読者が読まれることを期待したい。そうしないとあまりに日本は救われない。
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