国民の生活重視の人選よりも、単に官僚的な人事を繰り返すのか?:日本銀行審議委員の女性枠維持について

 各種報道によると、白井早由里氏が須田美矢子委員の退任に伴い、次期審議委員の候補になるという。白井氏は欧州経済やIMF改革などについての業績をお持ちな方である。しかしいまの日本銀行の政策について、特に国民的な問題であるデフレ問題についてどう考えているのか、少なくとも私はほとんど知らない。そもそも今回の人選は明らかに日本銀行と藤井内官房副長官主導による審議委員の「女性枠」維持のための人選であろう。

 つまりデフレ問題や国民経済がどうのこうのというよりも官僚的な前例踏襲主義を尊重した結果である。民主党内や政権内部にも、このようなでたらめに近い人選の基準を批判する人たちが多くいるはずである。率直にいって白井氏の過去の業績をみても、日本のデフレ脱却に積極的には思えず、その点でも不適格だと思うが、さらに「女性枠」などというバカげた慣例を墨守している危機感のみじんもない人選は、いまの政府と日本銀行の経済に対する危機感のなさを明瞭に語っている。まだ正式に任命されたわけではないので、民主党内にこの人選に公式に反対する声を期待したい。それができないようではすべて茶番である。

 こころある方がいればこのようなインチキな人選を批判するように、与野党問わず政治家に要望してほしい。

岩田規久男先生の『日本銀行は信用できるか』より

「まず、審議委員であるが、中原伸之元審議委員が指摘するように、事実上、審議委員は女性枠、産業(非金融・証券業)枠、金融・証券業枠、学者枠などと、固定的な選別になっている。これは業界・学界からまんべんなく真偽委員を(公平に?)選ぶという官僚的選出方法で、新日銀法の「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者」から選ぶという精神と相いれない。例えば、現在の日本では、経済学の女性研究者はごくわずかである。経済の中でも金融となるとさらに少ない。そうしたごくわずかしかない女性経済学研究者の中から、女性枠を伴って審議委員を選ぼうとすると、どうしても無理が生じる」

バカげた話である。

日本銀行は信用できるか (講談社現代新書)

日本銀行は信用できるか (講談社現代新書)