ケネス・ガルブレイス『アメリカの資本主義』と『大暴落1929』

 福田徳三研究の落ち葉拾い。山田雄三(福田の弟子、城山三郎とかの先生)が福田理論をガルブレイスの「拮抗力」countervailing powerと類似していると指摘したので、その拮抗力理論が展開されてるガルブレイスの『アメリカの資本主義』を図書館から借りて読む。拮抗力というのは、大企業が独占力をつよめていくと、市場がその独占力を弱める効果が次第に減少していく。と同時にこの企業の独占力に対抗して、消費者団体や労働組合などの集団的な権力組織が勃興してくる。これをガルブレイスは拮抗力と名付けた。

 拮抗力は、不況のもとでは強まり、他方で好況期では弱まる、とされている。例えばこのガルブレイス的な拮抗力をもじってみると、停滞期で大企業が規模が大きすぎて救済するしかないと政府が介入すれば、これに「拮抗」する形で、組織労働者を保全せよ、という圧力も増していく、あるいは未組織労働者の組織化も進む、という経験的にはありうるような見かたをガルブレイスは提起しているともいえようか。

 僕が参考にした著作集には最近復刊された『大恐慌1929』(『大暴落1929』として復刊)も同時に収録されているのだが、大恐慌の原因が悪しき企業と銀行組織の腐敗、適切な財政金融政策の放棄=清算主義、所得の悪分配(一部の富裕層への極端な高所得)、そして投機熱の崩壊が重なって恐慌を深いものにしたと書かれている。ここで拮抗力を持ち出せば、ニューディール政策による(チェーンストアなどのような)企業の寡占化の進展と労働組合の法的保護の進展というものとして理解されるのだろう。ガルブレイスの理論と、他にオルソンの集合財の理論や『セイヴィング・キャピタリズム」の議論と照らし合わせると面白い分析ができるかもしれない。

大暴落1929 (日経BPクラシックス)

大暴落1929 (日経BPクラシックス)