中村宗悦他『日本経済史1600-2000』

 ご恵贈いただく。ありがとうございます。中村さんの担当章は、「松方デフレから第一次世界大戦まで」の第3章です。この時期の概観としては最新のものになるのでありがたい限りです。まだ全部は読んでいません。ただ平成大不況を扱った論説(牛島利明氏担当)は正直、僕には首をかしげる点がありました。特に、平成大不況の原因説で、あれほどの対立を今日まで招いている論陣の一方である日本銀行の政策失敗仮説(総需要不足仮説)を無視しています。驚くべきことです。経済史家や経済思想史・経済学史研究者が時論の幅までみすえて、何かを書くことができるかどうかは、センスと運と努力の三本が必要で、ただ単に通常の研究を地道にすれば時論に架橋できるものないし現代的インプリケーションが加味されたものがかけるわけではないのではないか、と本書を読んで申し訳ないですが、強く思いました。その点が少し残念です。

日本経済史1600‐2000―歴史に読む現代

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