雇用・能力開発機構とセイヴィング キャピタリズム論

 昨日の「雇用流動化論の失敗」の後に、本では雇用・能力開発機構の廃止論が続いていた。いま同機構は廃止して、業務を「移管」したり、その担っていた国の職業能力開発業務は今後国の機関で協議されるらしい。まあ、通常だと「廃止」=終り、というのが世間の常識だろうけれども、もちろん日本の官治国家では常識ではない 笑。いくつかの機関に業務を「移管」ということは所属機関を変えて、アメーバーのように分裂しただけ。場合によってはそれらの移管先が焼け太りで予算増や非効率性の加速を招くかもしれない。また経済産業省厚労省などが協議して国の職業能力開発事業を見直すそうだが、これも新しいその事業の受け皿を生み出しかねないので危険。第三者の監視もあやうい。「廃止」とみせかけての延命(場合によっては拡大)の危険性は、現状ではむしろより高まる可能性がある。それは不況こそ無駄な政府機関の肥大化を招くという、僕がミルトン・フリードマンや、最近では『セイヴィング・キャピタリズム』の著者たちから学んだことでもある。


 この国の雇用政策の問題点については、たまたま猪瀬直樹さんのメールマガジンで以下のような記述があったので紹介しておこう。

 猪瀬直樹は今週16日月曜日、都立中央・城北職業能力開発センター板橋校、
東京しごとセンターの2箇所を視察しました。

 悪名高い独立行政法人の雇用能力開発機構に「職業能力開発促進センター(
ポリテクセンター)」がありますが、東京都の職業能力開発センターが充分に
役割を果たしているので、二重行政になっています。つまり、国の職業訓練
ムダということ。
 また、東京しごとセンターハローワークは二重行政の状態にありハローワ
ークは地方に移管すべきなのです。

 東京都の「職業能力開発センター」は国の「職業能力開発促進センター」と
は違い、地元の企業と密着しながら必要に応じた職業訓練を行なっていました。
 また、東京しごとセンターは年齢や求職に応じ、きめこまやかな職業紹介を
担っていました。

 都の雇用政策を視察した上で、猪瀬直樹は18日水曜日の分権委員会で、「国
が行なう全国一律の非効率な雇用政策は無駄が多い。地方に移譲せよ」と発言
しました。
 本日19日木曜日の日経朝刊に「雇用促進住宅3割空室 分権委がヒアリング
『国の事業、無駄多い』」との見出しで分権委員会の模様が報じられています
のでぜひご覧ください。

 それで話をもどすが、なぜ「雇用流動化論の失敗」の後で、この雇用・能力開発機構批判を展開したのかは、明敏な読者の方々はもうお分かりかと思うが、市場が産業調整(衰退産業から成長産業へ)をうまく行えないのは、デフレ不況のためであった。市場の新陳代謝がマクロ的要因で機能不全を起こしている。それを構造改革というさらなる市場メカニズムに依存した解決策は限界があり、そもそも政策の割当を間違えている。そこで、マクロ経済政策(リフレ政策)の出番なはずだが、なぜかここで公的な職業能力開発事業の出番だと思う人やその利権者たちがいたということだ。それは失業者の弱みにつけこみ、政府とその関連団体の「無駄」を肥大化させてしまうだけだ、というのが僕の主張であった。まさに僕なりの「セイヴィング・キャピタリズム」論であったと思う。もちろんまだ考えなければいけない問題は多く、それはいまも考察中である。

 よく考えたら過去のエントリーであまり『セイヴィング・キャピタリズム』の内容をふれてないようだのでそのうちまとめようかなあ。

セイヴィング キャピタリズム

セイヴィング キャピタリズム