チャールズ・プロッサーのコミットメントと裁量についての講演


 マンキュー先生のブログ経由。これはおススメ。

http://www.philadelphiafed.org/publicaffairs/speeches/plosser/2007/03-06-07_ny-assoc-bus-econ.cfm

(概要)

 金融政策における政策の効果についてコミットメントと裁量というふたつの観点から考え、前者は後者に比して経済厚生の改善が顕著であることが理論的・観察的事実から言及されていて、さらに今後コミットメントをどのように実現するかの方策も提起している。



 「コミットメント」とは、さまざまなショックへの政策対応を過去に約束した通りに行うことを意味し、他方で政策当事者が状況に応じてその時点時点で適切だと思う政策を採用することを「裁量」という。


 コミットメントの問題はいわゆる「時間非整合性」の問題でもある。例えば中央銀行(日本だと日本銀行)が事前にマイルドインフレ政策(1,2〜4%程度)を公表したとする。民間経済主体は約束に基づいて予想を行い、意思決定をする。しかし中央銀行がこの低インフレ政策を守らなかったら(あるいは守らないと時間の経過とともに理解されたら)どうなるだろうか? 民間の経済主体は約束を信頼せずに現在の意思決定を行うので、長期的には準最適(最適ではない)な結果に至ってしまうだろう。

 例えば中銀が失業とインフレのトレードオフに直面しているとする。この両者のトレードオフは民間経済主体の「予想(インフレ率)」に依存している。中銀は民間主体が低いインフレを予想するように導きたい。さきほどの低インフレ政策にしたがう約束を公表する中銀のインセンティブはここにある。しかしこの約束が守られないことを民間が予想したらいま書いたようにその政策の帰結は思わしいものではなくなる。


 そのため中銀は「裁量」を禁じて、低インフレ政策に「コミット」することを公表するのである。そのことが予想インフレ率を低位に導くことで、失業をそれほど悪化させずに、インフレを改善することが可能にもなっていくのである。したがって「裁量」に比較して「コミットメント」は経済厚生をより改善する仕組みだと考えられる。


 コミットメントを達成する方法としては、1)ルールの採用(テイラールールなど)、2)インフレ目標政策、3)評判(Reputation)である。また中銀は政策決定の透明性や市場とのコミュニケーションによって政策にともなう不確実性を軽減することができる。