『週刊東洋経済』不確実性の経済学入門

 小島さん、友野典男先生、高安秀樹先生らの特集。小島さんの論説を読みましたが、これにどうバーナンキ背理法が関係してくるのか皆目やはりわかりませんでした。

 例えばなんらかの状況で、リフレーションができないことをモデルで表すということを目指しているのでしょう。でも何のためにそんなことするんでしょうね。この記事の最後の設例など、いったいこの人は何を政策の議論として考えてるのかわからなくなります。いや、言い換えると現実とモデルの位置関係がどうも僕とは違うようです。興味のある方はご一読されたほうがいいと思います。

 それとその記事にでてきた動学的不整合の話自体はもちろん非常に重要です。できましたら(バーナンキ背理法と横断性条件などという何がなんだかわからない匿名さんの関連づけよりも)、以下の論文を直接読まれたほうがいいのではないでしょうか。両方ともインフレターゲットにおける裁量の位置づけについて理論的に詰めた議論をしているので著名なものです。僕はまだ不勉強で後者は読んでませんが。

 
 The Optimal Degree of Discretion in Monetary Policy (atheyほか)
 http://kuznets.harvard.edu/~athey/discretion.pdf

Inflation Band Targeting and Optimal Inflation Contracts(Mishkinほか)
http://www.iies.su.se/seminars/papers/060511.pdf

 それとまとめようかと思いましたが、ネット上でご本人もいるのでやめましいたが、日本の経済論争の中でバーナンキ背理法がそれ自体が論点のひとつとなったものに、岡田靖飯田泰之 vs 渡邊努 各氏の『論争日本の経済危機』があります。ご関心あればどういう文脈とモデルの議論の中で、バーナンキ背理法がつかわれたかわかるでしょう。

 あとインタゲと裁量の位置について以下のバーナンキの発言を引いておきます。

: バーナンキインフレターゲット論の主要内容は、1)フレームワーク、2)コミュニケーション戦略 のふたつで構成されている。フレームワークとは、先ほどの制約された裁量と同じであり、金融政策をいかに行うかについての「ベスト・プラクティス」(最善の実践)であるという。

 「制約下の裁量のもとで、中央銀行は、経済構造と政策効果について知識が不完全なことに注意を払いながら、短期的な混乱は無視してでも生産と雇用の安定のために自主的に最善を尽くせます(これが制約下の裁量の「裁量」部分です)。しかし決定的に重要な条件は、安定化政策を実施するにあたり、中央銀行がインフレーーそして、それゆえ国民のインフレ予想をしっかりとコントロールするという強いコミットメントを維持する必要もあるということです(これが制約下の裁量の「制約下」部分です)」(『リフレと金融政策』邦訳39頁)。

 これをめぐる議論が先にあげたふたつの論文の背景です。