基本的な柱はふたつ
1 グローバリゼーションがすべての国を幸せにするわけではない。特に発展途上国の場合(ミシュキンらのグローバリゼーション肯定論は、金融の国際化しかみておらず、またアジア経済危機などの教訓を無視していると批判)
2 IMFなど国際的機関のガバナンスへの批判。国際的な視野からの「政治の失敗」論といえるでしょう。
ここらへんの議論はスティグリッツの近著『世界に格差をバラまくグローバリズムを正す』の敷衍になっています。このスティグリッツの新著については私は『エコノミスト』誌で書評を書きました。ここに掲載してありますので参照ください。
インタビューアーの「日本の格差についてはどう思うか」という趣旨の質問について、スティグリッツはグローバリゼーションが日本の未熟練労働者の生活水準を(発展途上国との未熟練労働者との競争の結果)押し下げているだろうことは否定できない、と発言。しかし格差が深刻なのはセーフティネットの整備されていない米国の方だろう、と。
スティグリッツは経済格差への対応として、1)未熟練労働者を増やさないように教育投資の拡充、2)労働者の移動を円滑にする職業教育プログラムの整備、3)累進課税の徹底 を提起している。
最後に、「「いざなぎ景気」を超えた日本をどう思うか?」というベタな質問には、景気が回復しててもそれは力が弱い、日本銀行の利上げはふたたび経済の失速を招くおそれがある、と批判しております。
スティグリッツは日本の経済格差の判定には慎重なように思えます。また経済格差への対応策については1)と2)には異論がありません。3)については、基本的に私は経済格差の拡大はスティグリッツが原因の候補としているグロバリーゼーションの結果ではなく、不況が原因だと思いますので(スティグリッツもその点は他の著作にも書いてありますが否定しないでしょう)、経済格差緩和の意味で現状より累進課税を徹底する必要はないと判断しています。