戦略化した経済財政諮問会議のある文言


 今日のbewaadさんのブログにも書いたことですが、昨日のエントリーにも書きました中川幹事長の「日銀利上げならば政府の議決延長請求権、さらに日銀法改正」という政治的けん制はかなり事前に練られた戦略なんでしょうね。


 まず曲者は昨年の年末に経済財政諮問会議から出されて閣議了解をうけた下の文書です。

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2006/1220/item7.pdf


 この文書には

<2)平成18年度の経済動向
景気は、消費に弱さがみられるものの、回復を続けている。
平成18年度の我が国経済は、企業部門の好調さが、雇用・所得環境の改善を通じて家計部門へ波及し、民間需要中心の回復が続くと見込まれる。
物価の動向を総合的にみると、消費者物価指数は前年比で上昇が続いているが、石油製品、その他特殊要因を除くとゼロ近傍で推移しており、また、需給ギャップはゼロ近傍まで改善している。これらのこと等から、デフレからの脱却が視野に入っているものの、海外経済の動向などにみられるリスク要因を考慮しつつ、デフレに後戻りする可能性がないかどうか、注視していく必要がある。>


ということで景気の回復基調と(縮小傾向だけれども)デフレの共存という現状認識と、さらにリスク要因があげられています。で、景気が持続的に継続しデフレを脱却するために、この文書はある条件を入れ込んでいます。


<こうした結果、平成18年度の国内総生産の実質成長率は、1.9%程度(名目成長率は1.5%程度)になると見込まれる。
(3)平成19年度の経済見通し
平成19年度においては、世界経済の着実な回復が続く下、企業部門・家計部門ともに改善が続き、改革の加速・深化と政府・日本銀行の一体となった取組等により、物価の安定の下での自律的・持続的な経済成長が実現すると見込まれる。
こうした結果、平成19年度の国内総生産の実質成長率は、2.0%程度(名目成長率は2.2%程度)になると見込まれる。>


この上の文書の注意点は事実上の物価水準目標経路(0.6%程度の低率ですが)が明記されてることに「政府・日本銀行の一体となった取組」がコミットしていることです。 このような具体的な数値と政府・日銀の一体化をうたうことはいままでの文章にはなかったはずだと思います。


 この政府の認識をベースにすると(言い方をかえると之を戦略とすると)、日銀の現状のデフレ段階での再利上げを許容できないという発言も「正当化」をもってしまうでしょう(僕はそれでいいと思いますが。というかまだ目標経路低すぎ。ちなみに中川氏の個人的見解では『上げ潮の時代』のときよりもいまはさらに実質経済成長率が底上げし それにともなって目標名目成長率も上昇しているのですが。笑