読了。素朴な感想としてはなんでこんなに次々と本がでるのかすごいことだと思う。ここで「ワーキングプア」とは働いていても生活保護水準から抜け出せない人たちのことである。本書ではこの「ワーキングプア」が若年層の同一年齢層内の所得格差(非正社員増加などが理由)が拡大することを主因に、次第に日本社会の不安定要因になることに警鐘を鳴らしている。
ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る (宝島社新書)
- 作者: 門倉貴史
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2006/11/09
- メディア: 新書
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ニート論や景気回復効果への判定などは僕とは少し異なる見解だがw、それでも本書はこの特に若年層の雇用問題を考える際の参考になるだろう。ところでいまブランシャールが書いたヨーロッパの失業問題についてのペーパーを読んでいるのだが、低インフレの持続性と高い構造的失業のもとでの、需要喚起政策がこの失業率を低下させているかもしれない、という興味深い指摘を読んだ。そのうち別な機会で日本との関連も含めて考えればと思う。
それと本書の実際の中心は多くの実例をややドラマ仕立てで書いているところ。それにしてもBUNTENさんの「転落日記」ももっと世の中に知られていいように思うのだが。
(付記)本書では最低賃金水準の引き上げを「ワーキングプア」対策として提唱している。この対策の検証は別の機会に譲りたいが、本書でも「ワーキングプア」の子どもたちが「ワーキングプア」になることを最も懸念しているようである。とすると義務教育の質の低下の防止、さらには低所得者層への(義務教育段階での)教育クーポンの付与、そして高等教育では奨学金を借りられる利便性をますことも検討されるべきだと思う。もっとも僕自身はまだ教育クーポンにかかわる論点を整理しきれていないわけですが……。