ニート利権 その2


 とりあえず影響力を尊重して、本田さんたちの『「ニート」って言うな』を参照にして「ニート利権」とはなんぞやと考えたいと思います。他に参照文献としては、いま店頭にでている『SAPIO』の窪田順生さんのレポート「「私のしごと館」はニート対策より天下り官僚の仕事探しに役立っている」が便利です。


 基本的な認識としては、小泉政権が終わり、安部政権が「再チャレンジ」という掛け声をあげたことで、官僚やその出身者が「ニート」や若年労働者の雇用・教育問題を盾にして自らの職業の安泰や利権の確保、そして天下り先ゲットなどなどを必死に目指していることに問題があるように思えます。


 まあ、ドサクサにまぎれて安倍政権を食い物にしようとしているように思えますが、はてさて予算総量が制限されてますから、他省庁のダイナミックな予算分捕り合戦よりも、最近は民間や地方自治体や各省庁相乗りで、わずかな予算をせこせこ分配しあって、「産学官地方」連携でやっているのが現状ではないでしょうか。その分だけ問題のありかが非常にわかりにくくなっているように推察できます。


 で、本田さんのニートの現状分析は参考になります。この点は私も去年でました『SAPIO』の談話でも引用してますので、今回もそのまま上の本田チームの本から現状分析は乗らせていただきます。基本は「真性ニート」って増えてるどころか減ってんじゃないの? ということですね。


 本田さんたちのデータの見方によりますと、『青少年の就労に関する研究調査』が依拠している『就職構造基本調査』の再集計結果を利用したものです。本田さんたちは15歳から34歳までの学生・既婚者を除く無業者(仕事についてない人)の三類型(「求職型」、「非求職型」、「非希望型」)に注目します。


 「求職型」はいわゆる失業者の方々、「非求職型」は働きたい希望はあるが求職活動をしてない人たち、「非希望型」は働きたいという気持ちを表明していない人たちです。で、本田さんたちは「求職型」と「非求職型」は労働需要不足が原因であり、しかもその需要不足は構造的な要因と循環的な要因があって、相対的には前者が重要とみる立場です。ここで構造的な需要不足に否定的な私とは少なくとも異なるわけです。ですが、本田さんたちで注目すべきなのは、この(構造的・循環的どちらか、あるいは両方)の需要不足ではない、「非希望型ニート」が増えていないことを指摘したことがいまの議論では注目すべきところです。


「非希望型ニート」は、私の本(『経済政策を歴史で読む』)では「真性ニート」に該当します。大急ぎで先にいいますが、私も本田さんたちと同じように「真正ニート」でも「ニート」でも全部かっこつきであって、この形容にはそもそも反対なんです。だって働く意思を表明していない、というだけであまりに多様な人たちをくくってますから。


とりあえずこの「非希望型ニート」は、92年では41万2千人、97年では42万5千人、02年では若干減少して42万1千人でして、ほとんどここ10年変化していないことになってます。つまり90年代央から指摘されている経済格差拡大の主因とはみなしえないことは明白です。


ですが、現実の政策の方向はただでさえ「真性ニート」も多様なのに、それと明らかに異なる需要不足が原因で求職できない・しない層を含めた官製版ニートが80数万人と喧伝され、若者の労働意欲の変化とリンクされて、官僚たちの利権の温床あるいは予算確保の餌食、にされているということを本田さんたちも、僕なども指摘していたわけです。まあ、これが同床異夢だった側面がしゃべり場での論争につながっていったわけです。

さて「ニート利権」の具体的な先としてなんですが、長くなったのですこし時間あけてから。