クールジャパン政策の腐敗

 少し前だが雑誌『Wedge』が政府、官民ファンド型の組織によるクールジャパン政策の腐敗ぶりを特集していて面白かった。僕はたぶん日本でも最初期のこの官民ファンド型のクールジャパン戦略の批判者だと思う。

 雑誌『ニューモデルマガジンX』の官民ファンド批判としてanewなどの組織の経済的非効率性を批判したし、また一般論として『第三の産業革命』(kadokawa)に寄稿した論説でも官民ファンド型のクールジャパン戦略を批判してきた。ネット番組でも同様の指摘をしてきた。このブログではこのエントリーがまとめとして役立つだろう。

クールジャパン戦略についてのメモhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20130706#p1
官民ファンド批判についてのリンク集 http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20140103#p2

ヒロ・マスダ氏の論説では設立5年で成果がなく、単に14億円超の損失を計上しているにすぎない。それなのに経営は官僚たちから合格のお墨付きを得て、まったくその成果の検証がろくに行われず、民間が噛んでいるという名目だけで事実上の税金が垂れ流されている。また2013年に設立された官民ファンドであるクールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)も本田雅一氏の論説によると包括的な支援の見直しが必要との指摘があるほどその成果にはめぼしいものがない。だが、そもそも官民ファンドが事実上の税金を利用し、暗黙の政府の支援を盾に、海外へアニメなどの紹介支援を行う必要がどこまであるのか、真剣に検討すべきだろう。仮に海外の市場が競争的なものならば、単に民間のアニメやその他の文化財が需要されれば売れるだけであり(逆に求められないなら売れないだけで、無理やり買わす余地はない)、そこに政府や官民ファンドがでる隙間はない。むしろ官民ファンドのマジックー官僚の税金垂れ流し批判には民間をかませているから安心だと方便を駆使するやり口ーがここでも悪用されているだけだろう。

官民ファンドは「民間のガバナンスがあるから効率的」という官僚の都合のいい言い逃れに利用されているだけの数千億円からなる「ムダ」である。同じ金額ならば、別の重要な用途に利用すべきだ。例えば文化を海外に輸出するならば、若い学生たちを海外に留学させるための奨学金の拡充に使うのもいいだろう。少なくともその方が人材の海外交流に有益だ。わけのわからない官民ファンドで支援をうけた会社の「海外交流」はいらない。

Wedge (ウェッジ) 2016年 12月号 [雑誌]

Wedge (ウェッジ) 2016年 12月号 [雑誌]