『週刊東洋経済』の白川論説


エコノミスト』覗いて二重にがっくり。景気診断があまりにも予定調和的(機械的)に予測されている。その楽観ぶりは日銀レベル (ーー;)。
菊池信輝さんの論説は外交関係ではなく財界もの。「なしくくずしの小国主義」ネタではなくこれまたがっくり。


週刊東洋経済』のほうは、意外といっては失礼だが、福井総裁スキャンダルから明確な日銀批判に転じているように見受けられる白川浩道氏(クレディ・スイス証券)の方が経済の先行きに悲観的な見方で、ゼロ金利解除に厳しい評価だ。もちろん賛成できない点が半分以上もあるが(^^;)、その論旨はきっちり金融政策の実体経済への効果を織り込んでいる点で、『エコノミスト』論説群とは一線を画す(あちらはゼロ金利解除自体を実体経済にほとんど影響を与えないと断言している点ではげしく疑問)。といういわけでこの白川論説をやや詳しく紹介する。


1 日本経済は循環的に悪化方向へ(企業業績に先行性のある交易条件は1年前から大きく悪化、来年にかけて経常利益が15〜20%減益、設備投資低下) →ゼロ金利解除は最悪のタイミング
2 米経済の減速+FRBの利上げ継続可能性大 → 米経済の一層の減速
3 短期的な過剰流動性吸収効果(=流動性縮小によるリスク資産価格の低下圧力効果)について。やや長いが引用。
 現在、当座預金残高をみると、所要準備額6兆円<現行は11兆円(=5兆円程度の過剰流動性吸収負担あり)、ゆえにこの当預残の削減ペース(流動性縮小効果)によっては短期金融市場に混乱 →財務体質の弱い銀行はコール市場で高めの金利負担 →銀行のリスクテイク能力を変化 → 株を含めたリスク資産価格に下押し圧力

1〜3から日経平均1万3千円程度まで下落する可能性あり。ここまでが個人的に使える部分。以下もついでなので紹介。


4 白川氏はCPIプラスに引きずられるべきでなく、「正常化」のためには去年、ゼロ金利解除すべきだった派 →当然、ここはまったく私は違う。デフレで利上げすべきではないので。

5 4から白川氏は、最悪のタイミングでゼロ金利解除したので、これから政治圧力=「ゼロ金利解除失敗論」がでてくる可能性大→日銀の機動的利上げ妨害 →低金利政策の長期化 → 本格的な資産バブルの再来の可能性

もちろんこの5は実は微妙。まったく否定はできない。なぜならインフレ期待が懸念される段階で、低金利に固定することは資産バブルはどうかしらないが、経済を不安定化させるのはいえることだから。5の見解とあえて共通項をさがせば、ここでも政治的圧力を避け、金利のペッグ政策を回避するためにもインフレターゲットを採用したほうが好ましいといえるだろう。

(付記) 岡田さん、安達さん去ったあとの「日本経済ウィークリー」はほとんど読んだことがなかった。

http://jp.credit-suisse.com/IB/research/economic/jec_week.htm

ところで日本経済ウィークリーよりも、いま拾い読みしているんだけども債券ウィークリーの方が面白かったりして。