ヴィクセル的枠組みでの整理


 クルーグマンーヴィクセル的枠組みで最近の経済論戦を考えると、まず自然利子率を投資と貯蓄が等しい利子率と考える。このときこの架空の自然利子率を均衡実質利子率と読みかえる。ところでこの自然利子率がいまマイナスかまたはきわめて低水準であると考える。


 その一方で市場実質利子率(=名目利子率ー期待インフレ率)がこの自然利子率よりも高い水準に「高止まり」している状況を考える。例えば、クルーグマンはマイナスの自然利子率が存在するとして、名目利子率はゼロが下限なので期待インフレ率の項目がデフレ期待ならば、市場実質利子率はこのデフレ期待の分だけプラスとなり「高止まり」になる、という指摘。


 さてこのように市場実質利子率>均衡実質利子率という事態を解決するために


1 将来の金融緩和にコミットすることで、デフレ期待をインフレ期待に反転させて、市場実質利子率=均衡実質利子率 にする方策(リフレ派)

2 こーぞ改革によって、自然利子率自体を根性そのほかで上昇させて、市場実質利子率=均衡実質利子率 にする方策(素朴こーぞ改革派)

3 こーぞ改革②によって、デフレ期待をインフレ期待に転換して(同時に自然利子率の上昇)、市場実質利子率=均衡実質利子率 にする方策(精緻化したこーぞ改革派=「暗闇への跳躍」派)

  3−1 手法としては将来の構造改革の成果にコミットすることで期待成長率爆上げ
      →おまけの期待インフレ率爆上げ(竹中路線→郵政民営化不良債権処理など)

  3−2 産業政策で新規成長産業への政策的リード(吉川洋、小野ニュータイプガンダム理論、不良債権派もここに入る場合もあり)

  3−3 東アジア共同体でそもそもの「市場実質利子率>均衡実質利子率」関係チャラ、そのために日本人の意識改革大前提派(森嶋通夫や過去の大東      亜共栄圏論者ほか)


つう感じでしょうか。まあ、曲者が実は「自然利子率」なわけで、これはある種の理念的アマルガムだからなあ。例えば2の中に「素朴こーぞ改革派」だけでなく、植草氏などの「素朴りーふーれ派」も自然利子率の低下原因次第では入りかねないわな。