安達誠司『消費税10%後の日本経済』(すばる舎)

安達さんの最新作を頂戴しました。ありがとうございます。

消費税10%の効果で日本経済は徐々に低迷するという、ある意味で最悪のパターンにいきそうなことを、消費、雇用などの経済指標を丁寧に読み解いて解説しています。個人的にはこの徐々の低迷シナリオには賛同していて、よくある消費増税ハルマゲドン的なシナリオは安達さんともども否定的です。対応シナリオははっきりしていて、財政政策と金融政策の協調的な政策介入です。これについてもまったく異論はありません。

 

雇用環境は改善したとはいえ、失われた20年の問題としては、「失われた世代」の生活の問題、そして「無業者」の存在を考えれば、まだまだ経済刺激策の余地は多くあるでしょう。本書では雇用面での「無業者」の存在、フィリップス曲線のシフトと構造的変化の関係、また日銀の量的緩和の側面の「質」への注目など、個人的に興味深い論点を実証的に解説していて読ませます。

 

また税制の在り方や、また軽減税率の問題点、さらに消費増税の世代別への効果も注目すべき話題でした。個人的には細かいところで異論もあるFTPLやMMTの評価についても今後、僕自身の研究に役立ちそうで、毎回のことながら、安達さんの著作にはいろいろ助けられるところあります。

 

消費増税後の日本経済を考える上で、必読の一書であることは間違いなく、そして慎重にかつ丁寧に読み込むことを求められる本でもあります。

 

 

f:id:tanakahidetomi:20191010070816j:plain

www.amazon.co.jp