経済学の本格的な力を養うことのできる定番テキストとして、このレヴィットたちの『レヴィット ミクロ経済学』基礎&発展編は超お勧めである。
特に今回の発展編は、現実経済をより直接的に検討するさまざまなツールを理解し、使いこなす上での必修の項目が並んでいる。それと常に誤解されてるところだが、ベストセラーの『ヤバい経済学』はあくまで経済合理性に準拠した本だった。ところが今回のミクロ経済学では、レヴィットが行動経済学について書いていることも注目に値する。「行動経済学はこれまで学んだことがすべて無駄だったといっているのか」というレヴィットたちの直球の問いかけもあり、その答えには本書を読むことの意義がこれまたストレートに表明されている。さらに実験経済学の意義もこの問いかけから自然に出てくる流れも見事だ。
本書は教科書であることは間違いない。専門書ではないという意味だ。しかしいいテキストは著者たちが現実の問いを考えながら、「新しい経済学の体系」を生み出そうという意欲を持っていることで実現される。その意味では新しい知見を経済学の初心者から中級者が得るには最適なものになっているはずだ。まずは筆記用具をもってがしがし問題を解いたり、ノートを作成したりと、大学生だけではなく、社会人で本当の経済学の勉強をしたい人には得るものがありまくりだろう。
経済オタク的には、「良い教師はどこにいったのか?」とか「ゲーム理論が命を救う」とか「スパムメールを減らす」とか随所に面白い話題があることもお気に入りの証拠である。ここらへんの例示の選択はレヴィットたちは実にうまく、ここに『ヤバい経済学』の成果が反映されているのだろう。
また純テキスト的には、不完全競争、ゲーム理論、一般均衡の解説や練習問題が実に丁寧なのは助かる。ここらへんをきちんと理解しておくと、経済学は生涯の友になるでしょう。
- 作者: スティーヴンレヴィット,オースタングールズビー,チャドサイヴァーソン,Steven Levitt,Austan Goolsbee,Chad Syverson,安田洋祐,高遠裕子
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2018/01/26
- メディア: 単行本
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