“人出不足倒産”を過剰に重視してはいけない(2017年12月現在)

 “人出不足倒産”という文字を各メディアは実体以上に大きくとりあげる傾向にある。ラジオや動画、さまざまな論説でも言及しているが、分野ごとに人出不足的状況は表れているが、マクロ経済的に人出不足なのかといえばそれほどではない、というのが真実である。なぜなら本当に経済全体で人出不足が深刻化しているならば、賃金の上昇がより明確になるはずである。

 ところでこの“人出不足倒産”だが、最近では文化放送の「おは寺」(2017年11月14日)に出演した際にかなりコメントした。そのときのコメントを再現すると、東京商工リサーチの企業倒産状況が参考になる。
http://www.tsr-net.co.jp/news/status/half/2017_1st_02.html

これをみると記事中の要旨にあるように、「「人手不足」関連倒産が年度上半期では142件発生、このうち「求人難」型が16件(前年同期7件)と倍増」とある。ちなみに「人出不足」の主因は、例えば経営者が高齢化ないし死亡してその後継者がいないための倒産などが中心である。これらは景気回復が加速化して働き手がみつからないゆえの倒産とは違う種類だ。

 いわゆる働く人が見つからないための「求人難」型は「人出不足倒産」の1割弱である。これは全倒産件数4220件のうち、その占める割合は0.4%にすぎない。もちろん倒産された方々は大変ではある。だが、問題はマスコミがこのような件数で16件、倒産件数が占める割合が0.4%をもってあたかも「人出不足」が経済全体に蔓延しているという誤解を流布しているようにしか思えない。人出不足的状況は次第に経済全般に及んでいる流れは間違いないが、その帰結は倒産の件数増加よりもまず本格化するのは賃金上昇と、そしてそれに先行しかつ同伴するさまざまな売り上げの増加である。

 「人出不足倒産」のデータを過大に評価して経済全体の流れをそれで判断するのは避けたいところである。