日本銀行がマイナス金利を採用した。その直後からtwitterで書いたものをまとめただけ。29日から30日にかけて書いたが、ここでは29日にまとめてエントリーしておく。
消費増税は恒常的に消費を落ち込ませる。これへの対策が目先だけの給付金やら公共事業やらでは歯が立たない。恒常的な意味での給付金や減税には消費増税に打ち勝つ効果がある(社会資本はメンテ問題あり)。金融緩和は「恒常的」な効果があり、その意味で今回のマイナス金利を支持する。無策より上だ。
マイナス金利は無策より上だが、「レジーム転換」的なものには遠く、限定的効果だろう。しかし当面、不安定化した株価や為替レートを12月ぐらいの水準に戻す機会になれば大成功だ。マイナス金利への限定効果論は以下で。http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi20151018#p1
回転するナイフを掴んだのが、今回の最大の貢献。空気読めの政策じゃない。上にも書いたが、まず株価、為替レートが12月の水準に戻れば大成功。
すぐにきがつく点は、日銀のマイナス金利はめちゃめちゃわかりずらいということ。しかし問題はその「わかりずらさ」ではない。実際に資産価格(株価や為替レート)に影響を与えるのは、政策の方向性が安定するか否か。そういうメッセージとして「マイナス金利」は機能している。うまくいけばいい。祈る。
回転するナイフ(チャイナショック×消費増税の悪影響)をつかんだマイナス金利の効果はいまのところ上々の出来。【ドル円】 121.13 +2.31 △1.95% [06:59] http://nikkei225jp.com/fx/
政策変更直前から何度も書いているように、マイナス金利は限定的効果しかない。株価や為替レートでみれば昨年の12月の水準に戻すのが最大望める成果だと思う。だがもちろん無策と比較するのもばからしいほどその効果は現状ではある。財務省的な国債発行自粛のスタンスが背景にあるのが難。
このマイナス金利政策は昨年から財務省に親和的な経済学者やエコノミストたちが特に熱心に主張していた。今回のマイナス金利の採用も財務省の主導であろう。その意味では黒田総裁は財務省日銀支店長の職務を今回もまっとうした。しかし今の日本には最低限これは必要であるしリフレ的でもあり評価すべき。
マイナス金利が財務省謹製であることの弊害はすでに指摘するのはたやすい。1)財務省主導だと白川日銀以前の日銀がそうであったように政策決定内容がリークしやすい。今回もしている。2)国債自粛主義、つまりは緊縮主義があるので中長期的には、今後の日銀の緩和姿勢の自主規制につながる可能性あり。
マイナス金利の三層構造など難解な部分はマクロ政策的な意味では問題ではない。そこに注目すると今回の決定の意味を見失う可能性がある。市場はチャイナショックの背景にある「期待の失敗」で不安定化していた。そこにマイナス金利はアンカーを投じたと現状では思われる。それだけだが、いまの段階ではきわめて重要であり、繰り返すが支持すべき政策だ。
政策観がとろそうな人ほど、マイナス金利のどーでもいいテクニカルな部分に注目してしまう悪寒。個人的には、ともかく去年12月ぐらいの水準に株価、為替レートが戻ることを期待する(まだ安定してないと思う)。南無南無。そして本当に財務省が日本を緊縮病というもので支配しているのがちらみえる。
関連して、上記のチャイナショックの正体である「期待の失敗」については以下の本を参照してほしい。
「30万人都市」が日本を救う! 〔中国版「ブラックマンデー」と日本経済〕
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また日本の財政政策と金融政策が、財務省主導の消費増税路線によりちぐはぐになり効果を減退させている点や、また望ましい「レジーム転換」については以下の本を参照してほしい。