古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社+α文庫)&中森明夫「古市憲寿とは何者か?」

 中森明夫さんの巻末解説「古市憲寿とは何者か?」を読むために購入。古市ポップスター論を展開。中森さんらしいけど、古市氏の発言に批判的な僕には生ぬるく感じたりもする。

 ポップスターが賞味期限切れをいかに回避してきたかの一般論から古市氏の言説や行動などに注目するのは興味あることかもしれない。この前の麻木久仁子さん、飯田泰之さんとのトークイベントでも古市氏が政府の委員会や審議会などで「若い世代」の代弁者として利用され消費されるのではないか、という指摘を僕はしたのだが、中森さんの解説を読むと、分野こそ違え経済学でいうと伊東元重氏などと似たタイプとして、ポップがやがて懐メロになっても長持ちする可能性が古市氏にはあるのかもしれない。

 今回、保守系デモや反原発デモを描いた第4章と5章に加えて、SEALDsの活動が補記されている。これらの章を読むとその分析の新しさはないものの(なぜならSEALDsについての分析は、古谷経衡さんの分析と類似しているので)、日本にこの数年起きた出来事の俯瞰としては役にたつ。出版して数年を経てわかったのは、本書の同時代カタログ的なつくりである。ただしそれらの同時代への態度は、決まった角度はない。ここらへんが「ムラムラ」する人もいるだろう。