大森望『50代からのアイドル入門』&トークイベント参加

 大森望さんから頂戴した『50代からのアイドル入門』はそのかなりの分量をしめるネット連載のときから読んでいて、とても簡潔かつ必要十分なアイドルたちや、ライブでの鑑賞の様子の描き方に刺激をうけたものです。ともかく書評や文学の世界で長年蓄積されてきたノウハウが、アイドルの世界でどう応用されているのか、そこが本書を読むときの肝心要なところだと思います。しかし本当に文章がうまいな、と感心。

 ハロプロ中心なので、日本のアイドルの「正統」をおさえられるというとこともまた本書の強みです。それ以外のアイドルたちのライブ風景ももちろん多く登場してきて、特にはちきんガールズのコラムは、拙著『ご当地アイドルの経済学』と相互補完できて読者には興味深いと思います。また本書には、さまざまなヲタ群像が描かれていて、中高年ファンの悲哀と楽しみがリアルに記述されています。ともかく無駄なところがないのが本書の強みです。評論的なものよりも、まさに本書の題名のように中高年のアイドル入門、再入門としてのガイド的な意味合いを持っていて、その狙いは成功していると思います。まさに本書の中核メッセージだと思いますが、アイドルは大人の趣味として成立する豊かさをもつことが本書でよくわかるでしょう。

50代からのアイドル入門

50代からのアイドル入門

 また中森明夫さんと大森さんとのトークイベントにも参加しました。中森さんの「日露戦争」以前の「我が軍」の話や、「いままでの大森さんの本で一番おもしろい、大森さんが何者かがわかる」というトークイベント冒頭の断言は、まさに的確だと思います。アイドルはその人の「純粋性」をも照らし出すのかもしれません。

トークイベントの概要はtwitterなどでまとめられた方々もいますので、以下は知識的な自分用の備忘録です。

「自由の意味をはきちがえてる」(田中)というフレーズを中森さんに思い出させていただきましたw。感謝です。
中森文化新聞でのハロプロ以前のつんく、なっちらとの対談。
ハロプロなくしてアイドルブームなし」
ソロアイドルのむずかしさ⇒物語が構築しずらい。たとえばメンバー間の関係性というドラマがつくりにくい。
X21の吉本実憂の映画での接吻へのヲタ反応。
本書でも展開されてる、ハロプロアイデンティティとしてのつんくイズム(関西的ノリ、アイドル歌曲への異物混入的要素ーホスト、演歌、ムード歌謡など)、それに対する、つんくイズムから断絶したこぶしファクトリーにもやはり異物混入的なもの(つんく的なもの)がある。
ユニドル
朝井リョウ『武道館』について
ヒャダインの雑誌『ROLA』連載でのアイドル運営分析への評価
BiS の映画『アイドル・イズ・デッド』での映画中とラストのライブシーンでのヲタの抑圧と解放の対照
岩井俊二への言及

そして場所を変えて居酒屋談義。書ける話題としては、
中森明夫さんから「田中さんは好きになるはずw」とご紹介いただいた小川紗良さん@grfft_ogawasara は早稲田の学生さんで俳優兼映画監督です。夕張で上映された「あさつゆ」予告編はこちら。おじさんの妄想を刺激します!

それとアイドルと小室哲哉の関係を居酒屋談義でしてそのとき、アイドルに小室氏が楽曲を提供したと僕がいいましたが、それはX21で、以下のもの。

それと中森さんのアイドル小説の基本パターンの話も興味深くききました。なにかと得るものが多いイベントでした。