I・ドイヨル&I・ゴフ『必要の理論』

 人間の必要概念についての哲学的な考察。ハートレーディーンの著作『ニーズとは何か』でも紹介されていたが、この分野の代表的な著作。

「身体的生存と人格的自律はどの文化どの個人的行為にとっても前提条件であるから、この身体的生存と人格的自律の二つが、最も基本的な人間の必要ー行為者が他の価値ある目標を達成するため当人の生活形態に効果的に参加することができる以前に、ある程度満たされているべきものーを構成する」とし、身体的生存と人格的自律の社会的条件(生産、再生産、文化的伝達、権威)を明記し、この必要の最低水準から最適水準までの充足を哲学的に基礎づけることを行っている。そのことで相対主義的立場を乗りこえることが試みられている。それが成功しているかは別で、議論的にかなり煩雑になってしまい後半はわかりがたい議論が並ぶ。ともあれ基本書が訳されたことは嬉しいことではある。

なお橋本努さんのブログでも取り上げられているがやはり後半の諸章には触れられていない。邪推だが、やはり本書の後半部分がどうも明晰ではないことがあるのかもしれない。
http://d.hatena.ne.jp/tomusinet/20141120

なお関連するエントリーとしてはここhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20150614#p2

必要の理論

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ニーズとは何か

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