すこし問題意識を難しく書きすぎているのが気になったが、個々の章には興味深いものがいくつかあって楽しめた。木下直之「二五人の渋沢栄一 銅像からゆるキャラまで」は、題名の通りに銅像などの写真をみるだけで楽しい。平井雄一郎氏の「渋沢栄一の「事実/真実」から「存在の謎」へ」は、率直にいってもっと平明な文章を期待したいのだが、それでも本書中もっとも面白く読んだ。鹿島茂、城山三郎、幸田露伴らの渋沢伝記の批判的検討を通じて、現在までの渋沢像の受容と研究の進展がわかり、刺激的だ。中村宗悦さんの「イメージの収斂と拡散 多様化するメディアと渋沢像」は、昔一緒に研究した経済雑誌『サラリーマン』の成果が盛り込まれていて、20〜30年代の渋沢像についてよく理解できる著作。文章は今回寄稿した中で最もすらっと読める。さきほども書いたが、あまりにも文体が固い&余計な観念をごたごたいれすぎて、扱う題材以上に「盛られてる」章が多くはないだろうか?
しかし渋沢栄一の出身地(これも本書で議論されてるが論点あり)深谷に、本務校が近いだけに、いつも気にはしているのだが、なかなかどう研究していくかつかみがたい人である。学生たちの卒論のテーマには最適だとは思うけど。そのきっかけとして本書も利用したい。

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