金子洋一参議院議員による黒田日銀総裁への質疑in財政金融委員会(5月15日)のまとめと感想

 遅れて申し訳なかったですが、金子洋一議員の財政金融委員会での黒田日銀総裁への質疑応答ですが、動画を拝見したり、ネットの評判などを見ました。現段階でこれほど深くポイントをついた質問ができる国会議員は、金子さん含めてほんの数名だと思います。そういう議員の方々は、日本の本当の財産だと思うので、党派や政治的信条に関係なく僕は応援したい。また今回は、黒田総裁とのやりとりは非常に興味深く、ぜひ動画で該当する部分を見ていただきたい。

 以下のサイトで委員会名、日付を選び、発言者で「金子洋一」を選ぶと動画がみれます。

http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

金子議員の質問の要旨

1)日銀は金融政策の現状維持を継続しているが、その判断の基礎は何か。特に日銀は現在の日本経済が需給ギャップゼロに近づいていること、つまり潜在GDPの水準に近いという判断に立っている。しかし他方で実質経済成長率をみると直近で0.8%も縮小し、他方でコアコアCPIをみれば0.7%。潜在GDPの水準に近いとはいえないのではないか。規模が4兆円ほど縮小し、他方で物価の急速な上昇は観測されず歩みが遅い。また潜在成長率の推計は多々あるが、日銀は内閣府とは異なる。特に日銀の推計の仕方だと景気がよくなると一気に潜在成長率が低下し、他方で悪化すると一緒に上昇する。

⇒黒田総裁の答弁は、日銀の潜在成長率の推計は労働や稼働率などをみて推計している。また黒田総裁はここでフィリプス曲線を持ち出し、その曲線からいうと現在の物価の上昇率と失業率の変化とはそれほどおかしいものではない、と指摘している。ここはなかなか、日銀の伝統にはない答弁。

2)日銀は追加緩和についてもっと強い姿勢を打ち出すことがいいのではないか? 日銀の姿勢が株式市場などに好感をもって迎えられるのではないか?

⇒黒田総裁の答弁:追加緩和は躊躇しない。株式市場については言明さけるが、ただ中長期的には将来の企業収益の見通しで動くのでその点は日銀は注視している。

3)POSデータを集計をする東京大学消費者物価指数をどう思うか? 内閣府と日銀双方への質問。

内閣府:同指数の特性。カバレッジの狭さ、下方バイアス、速報性
⇒日銀:同上

4)東大指数は低位安定している中での消費税増税。景気への懸念あり。特に政府は増税対策で予算の前倒し消化をしている。そのため今年の前半は景気が保てても、予算が切れる今年終盤には景気悪化するのではないか? その悪化を見ずに、今年の秋ごろに10%の消費増税の判断をすると、ちょうど景気が悪い時期に増税が重なるのではないか?

⇒麻生財務大臣財務大臣の答弁、いったい何いってんだかよくわかんね(笑)。たぶん様子見。

全体の感想:金子議員のポイントをついた質問に、黒田総裁がフィリプス曲線を持ち出すなど面白い切りかえしがあった。また日銀の現状の判断基礎がこの点からも少しわかってきている。問題は政府の態度がよくわからないことだ。様子見していることはわかったが、他方で予算消化のスピードが速いことを認めつつ、その効果も限定的に理解している? よくわからない。金子さんにはぜひこれからも機会を見つけて日銀・政府の経済政策の基礎を追求していっていただきたい。少なくとも黒田総裁は打ち返すつもりではいるようだ(好意的すぎる?)。