金子洋一議員の白川方明日本銀行総裁への質問(金子洋一メールマガジン始まる)

 金子さんが白川日銀総裁に国会で質問をしました。ややテクニカルな話もふくまれますが、簡単にいうと、景気が悪化しているときに、日本銀行が金融緩和をするのは当たり前ですが、それを恣意的な制限をもうけて積極的にやらない(=日本銀行の立場)、それを問題視しているのが、金子さんです。なぜ日本銀行がそのような恣意的な制限をもうけているのか、それはたぶん本人たちでさえよく理由はわかっていないと思います。なぜなら前例で決まっているから踏襲しているだけなのです。まっとうな理由がないために、さまざまな細かい言いわけをあげていくのが官僚的な話術の特徴ですが、そのココロは「いまと同じやり方で非常時も変えずにいきたい(だって変えるとまわりの人間関係失うから)」というものだと思います。

金子洋一さんのホームページhttp://blog.guts-kaneko.com/2011/08/post_572.phpからの国会質疑を以下にコピペ

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金子洋一君 まず一点、銀行券ルール、今最後のお答えにありました銀行券ルール以外の分も長期国債を購入しておられるということなんですが、じゃ、その残高がどのくらいかと申しますと、これ一・三兆円にすぎないんですね。銀行券ルールというのは八十兆円を上限にということでありますので、一・三兆円分出しましたと、しかも合計をしても六十一兆円、六十二兆円にすぎません。あと十八兆円、銀行券ルールの天井まであるわけです。そうなりますと、銀行券ルールを見直したとおっしゃるその表現はいささか羊頭狗肉の類いではないかと私は思います。

 さらにもう一点ですが、まさにそのリーマン・ショックの後の対応を我々は日本銀行にも求めているわけです。米国もそしてイギリスも、リーマン・ショック後にどおんとバランスシートを拡大をした。それを我が国はやっていないから、先ほどお話を申し上げましたけれども、円高が大変急速に進む。だから、それを我が国でもやりましょうと。これは、この財金委員会の中でも同僚議員が何回も何回も日本銀行に対してお尋ねをしているところです。

 どうしてそれをやっていただけないのか。バランスシートを拡大をして、それでもし弊害があったとすれば、それは我々がやってくださいとお願いをしたんですから、政治の責任になるわけです。今のままですと、バランスシート拡大しません、しませんということになりますと、この十三年、日銀法改正以降ずっと続いているデフレ、これは日本銀行の完全に責任ですよと言われても、これは答えられないんじゃないかと思います。

 バランスシートを是非拡大すべきだと思いますが、この点について簡潔に御所見をお願いします。

参考人白川方明君) 簡潔にということで申し上げますと、日本銀行は極めて潤沢に資金を供給しております。

 その上で、少し簡潔でない部分になってまいりますけれども、日本銀行は、今議員が御指摘のリーマン・ショックが起こる以前から、リーマン・ショック後にほかの中央銀行が展開したのと同じような規模の金融緩和を既に実行しておりました。つまり、リーマン・ショックの前からそれだけの潤沢な資金供給を行い、さらに、この数年間の変化という面でも、日本銀行は潤沢な資金供給に努めております。

 先般、包括的な金融緩和の下で、更に基金の総額を四十兆円から五十兆円に増額していまして、これは着実に潤沢な資金供給にも努めておるところでございます。

○金子洋一君 そろそろ時間がなくなってまいりましたので一言申し上げますけれども、総裁の今のお話、GDP比で大きいんだというようなお話をいただいておりますけれども、それは貨幣の流通速度を無視すればそういうことになる。つまり、日本というのはデフレで、資金の巡りが悪いわけです。資金の巡りが元々悪いところに、いや、それはほかの国よりは資金たくさん出していますといっても、それは全然説明にも何もなっていません。変化率で見なきゃ駄目です。二〇〇八年の九月以前と比較をしてどれだけバランスシートを拡大させたのかと、その変化率が我が国は全く劣っているし、ですから緊急時に有事の対応ができていないということになるわけです。

 どうかその点をお考えをいただきたいということを強調させていただきまして、私からの質疑は終了させていただきます。

この質疑について、金子さんは直近のメールマガジンで以下のように書いています。

日銀が設定している銀行券ルールでの長期国債保有残高の上限は日銀券の総発行残高である
約80兆円です。日銀は今、約62兆円の長期国債を引き受けていますが、銀行券ルールの上限
までは、まだ18兆円もあるのです。これ以上の円高を防ぐためには、長期国債の買い切り
オペレーションを中心に、銀行券ルールにはとらわれることなく、ルールを超えてでも大規模な
量的金融緩和策を打ち出すべきでしょう。言い方を変えれば、日銀のバランスシート(貸借
対照表)を拡大する必要があるのです。

私からは、上記のような指摘をさせていただいたのですが、白川総裁は「日本銀行は潤沢な
資金供給に努めている」の一点張りで、議論はかみ合いませんでした。

日銀は、金融システムが不安定になりそうになると迅速に対応しますが、それ以外の国内産業が
不況にあえいでいてもきわめて緩慢にしか反応しません。これは例えば米国の中央銀行にあたる
FRBとはまったく違う点です。米国では、景気悪化に対応するのは第一に中央銀行の仕事です。
これまで日銀がやるべき仕事をやってこなかったことが、10年以上続いているデフレの最大の
原因だと私は考えています。円高の克服は、日銀が多くの資産をマーケットから購入することに
よって直ぐにでも可能です。なぜそれをしないのでしょうか。日銀にいわせると「物価が上がる
から」というのですが、このデフレの最中に物価上昇を恐れても仕方がありません。

今、我々は韓国、台湾、中華人民共和国といったアジアの新興国と競争しなければなりません。
韓国などは、ドル以上に人為的にウォン安政策を進め、輸出を増やしています。韓国は、EUと
自由貿易協定を結び、液晶テレビなどの関税を撤廃し、10%、時には20%以上にものぼる関税を
課せられている日本製品は欧州で急速に価格的な競争力を失ってきております。

まったく正論だと思います。ただ白川総裁もかなり追い込められているようで、以前のようなわけのわからない詭弁(直接引き受けやってるんだかいないんだかをあいまいにする逃げ口上とか)は控えめになってきているようです。ここでもひたすら「潤沢な資金提供」という文言だけで切り抜けようとしていて、後がありません。本当は後をつけるための言いわけならば、官僚ですからごまんとできるのを、ここでは後々言質をとられないために、バカのひとつ覚えのように「潤沢な資金提供」で逃げをうっているところや、また他の審議委員の微温的な態度を考えると、これは面白い姿勢のシフトがあるように思いますね。まあ、この組織は毎度こうやって追いつめられてくる(政治的な変わり目にそういう姿勢をとりやすい)とこのような発言をわりというのですが、また今回もか、という感じです。

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