中森明夫さんの「敗戦後アイドル論」(『一冊の本』という朝日新聞社出版の雑誌に収録)は、アイドルに興味のある人はぜひ読んでおくべきもの。「敗戦」というものが日本のアイドルの形成に与えた影響を俯瞰している。南沙織が「返還直前のその南の島からやって来た米国籍の少女が日本のアイドル第一号であったということの意味は重い」など、米国の占領の影からの脱出に注目。アメリカの影からの脱出の成果/精華として「日本産アイドル」に注目している。「敗戦後」「アメリカ」というキーワードを駆使して、戦後のアイドル史を今日まで俯瞰している力技であり興味深い。
また秋元康の試みにも注目しているのが個人的にはツボ。僕も『AKB48の終焉』(主婦の友社)で最終章が秋元論で、そこでも二年前の中森さんとの対談を参照している。僕がその本で自説として展開したのは、「空虚の思想家」としての秋元康。特に「心のポートフォリオ」(詳細は同書参照のこと)について語った。秋元康氏は人生論・恋愛論など「説教」的な本を膨大な量書いている。それに関連した翻訳もある(大島渚や冬ソナワールドとの接点もある)。ところが彼はこんな膨大な人生論・恋愛論を書いているものの、「まったく恋愛や人生を語るカリスマ」になっていないことが重要。つまり膨大な「ムダ」を輩出している。これら説教の残骸の上に、空虚な思想家としての秋元のアイドル稼業が成立していることに注目している。
秋元康論といえば、この二年前にやった速水健朗さんとの対談も重要。特にジャニー喜多川氏と秋元康氏との比較について言及している点。ちなみにこの対談は、速水さんの仕事が一見すると話題がバラバラでも同じ主題を追っていることがわかることでも重要。
朝日新聞社『一冊の本』二月号はこちらhttp://publications.asahi.com/ecs/22.shtml
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