ジャン・バティスト・セーを語る:後編(AJER動画)

 後編は、ジャン・バティスト・セー自身の経済学と「セー法則」の現代的解釈について語りました。どうかご覧ください。

youtube動画
http://www.youtube.com/watch?v=QbtVsVArmAI
http://www.youtube.com/watch?v=7KSz0ibC7PA

ニコニコ動画
http://www.nicovideo.jp/watch/sm19561371
http://www.nicovideo.jp/watch/sm19561394

利用した文献情報(amazonでリンクできるもの)
セーの著作集が現在出版中である。処女作の「オルビー」は以下のものに収録されている。
Oeuvres complètes tome V : Oeuvres morales et politiques

代表作の『経済学概論』は戦前に日本語訳がでている(増井幸雄訳「経済学」上下)。また何冊かフランス語原典でも重要な版本があるし、そもそも初版と最終第8版では内容が大幅に異なる。

僕が愛読しているのは以下のカルマン・レヴィ版(最終版によるもの)。
TRAITE D'ECONOMIE POLITIQUE

日本語で他に読めるセーの著作で単行本は以下のものがある。
『経済学問答』はセーの経済学体系(代表作の『経済学概論』と『実践経済学講義』)の要点をまとめたもの。戦後の翻訳なので読むのも難がない。図書館でとりよせるなどして読まれるのはどうだろうか? そもそもフランスの経済学の本は少ないので読むだけでも面白い体験になる。

経済学問答 (1967年)

経済学問答 (1967年)

次の書簡集は、セー、リカードマルサスらとのやりとりを収録した便利なもの。当時の経済学者たちのガチンコの不況論争の記録でもある。
恐慌に関する書簡 (1950年) (世界古典文庫〈第131〉)

恐慌に関する書簡 (1950年) (世界古典文庫〈第131〉)

番組中にふれたセーのスミス『国富論』への書き込みは、橋本比登志氏の手で紀要雑誌に掲載されている(KSU economic and business review 7, 53-81, 1980-05)。紀要雑誌などは国立国会図書館でみることができるし、街の図書館でも書誌情報をいえば、コピーサービスなどが利用できるはずだ。橋本氏は他にもセーの翻訳や書簡などを紀要に発表しているので論文検索(http://ci.nii.ac.jp/)などであたるといいだろう。

セーの研究書で僕がこの番組にあたって再読したものは次のもの。最初のものは昭和23年のものだがいまでも恐ろしいほど便利だ。日本の経済学史研究の水準の高さがわかる。後者は僕のゼミの先輩でもある喜多見洋さんのすぐれた解説。セー研究の国際水準の成果を見事に吸収した成果だ。

セイ「経済学」 (1948年) (春秋社経済学選書)

セイ「経済学」 (1948年) (春秋社経済学選書)

経済思想〈4〉経済学の古典的世界〈1〉

経済思想〈4〉経済学の古典的世界〈1〉

古典派経済学における販路説については、僕は以下の本をおススメする。ソウェルはミルトン・フリードマンの愛弟子であり、彼の古典派経済学解釈は斬新。特に最後の本は、古典派経済学を方法論、ミクロ、マクロなどの観点から綺麗に整理している。
Say's Law: An Historical Analysis

Say's Law: An Historical Analysis

Classical Economics Reconsidered

Classical Economics Reconsidered

番組の後半での現代版のセー法則については、松尾匡さんの以下の本の整理を参考にした(松尾さんにはセイ法則の専門書まであるw)。また浜田先生の発言は、『季刊政策分析』第6巻第1・2合併号(2011年5月)に掲載されている。ちなみに古典派の方の販路説も現代版のセー法則の方も研究史は実に厚みがあり、前者だけでも何冊もの本や論文集があるほどだ。後者に至っては数限りなし。

対話でわかる 痛快明解 経済学史

対話でわかる 痛快明解 経済学史

セー以前のフランスの経済思想についての参考文献についても。ボアギュベールについては訳書はない。番組中でもふれた福田徳三と河上肇の論争におけるボアギュベールに位置と彼らの論説については信じられないぐらい細かい評注をつけて以下の雑誌に収録してある。

〔学芸総合誌・季刊〕 環 Vol.3(2000 Autumn) 【特集】貨幣とは何か (環 ― 歴史・環境・文明)

〔学芸総合誌・季刊〕 環 Vol.3(2000 Autumn) 【特集】貨幣とは何か (環 ― 歴史・環境・文明)

ボアギュベールの著作は分厚い二巻本として『ピエール・ド・ボアギュベール――経済学の誕生』(1966)でまとめられています。
Pierre de boiguilbert ou la naissance de l'économie politique

カンティロンについては以下の翻訳を参照ください。殺害事件についても番組よりも深い?情報があるかもですよ 笑

商業試論

商業試論

ジョン・ローについては番組ではあまり深くやれずにネタ程度でしたが、最近ではより本格的な研究もされているようで機会があればバブル研究の一環としてまた話したいと思います。

ケネーの著作の翻訳は以下が読みやすいですね。番組でふれた中国論は二番目のものです。

ケネー経済表 原表第3版所収版

ケネー経済表 原表第3版所収版

支那論 (1940年) (支那研究古典叢刊〈第1冊〉)

支那論 (1940年) (支那研究古典叢刊〈第1冊〉)

ケネー研究もレオンチェフやスラッファなどとの現代的な文脈でまた考えてみたい材料です。番組では名前だけ出したテュルゴの著作は以下のものがいいです。

いままでの経済思想史塾のエントリー一覧
アダム・スミス編前編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121025#p1
アダム・スミス編後編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121031#p1
トマス・ロバート・マルサス編前編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121107#p1
トマス・ロバート・マルサス編後編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121113#p1
デイビッド・リカードを語る:前編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121121#p1
デイビッド・リカードを語る:後編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121128#p1
ジャン・バティスト・セー編前編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121205#p1
ジャン・バティスト・セー後編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121212#p1