Twitterで以下のようなことを書いた。
「オレは自分とは問題意識もまたマクロ政策の解法も違う人の本を読むのが実は大好物である。ああだこうだとしかネット匿名に評されてない金子勝氏の本や山口二郎氏の本もかなり読んでる。前者はたぶん20冊近く。それくらい読んでから他人を批判するならしたほうがいいが、まあ、ネット匿名には無駄な助言」
別に金子勝氏に特別執着しているわけではなく、野口悠紀雄氏の本なら30冊(『情報の経済理論』や榊原英資氏との大蔵省王朝論文から最近の『ブロックチェーン革命』まで)は軽く読んでるし、水野和夫氏のもいつの間にか10冊ぐらいは読んでる。
以下ではいつか感想をどこかで書こうとおもってた金子勝×松尾匡『ポスト「アベノミクス」の経済学』(かもがわ出版)を含めて、金子勝を批判したい人は読んでおいた方がいいベスト5をあげておこうw。ただ今書いて思ったのは、ネットの世界は本当に本末転倒してて、実際にはその人物の書いたものをそれなりに読まないと批判などできないのに、いまは断片だけ消費して批判した気になってる愚か者が大手をふる時代になってしまった。深刻である。
以下の本の順番は適当である。
児玉氏は医学・生物学の専門家。分子生物学ぐらいちゃんと学ばないとこの本はわからないのではないか、と身構えるまでもなく、簡単にいうと「現実の経済って複雑! 複雑だけどオレたちならその解法がわかる」といってるようなものなのでそんなに難しくも新しいことも言ってはいない。『日本病』(岩波新書)が最近の共著だが、彼らなりの病状は進行しているようだ。
2)金子勝&大澤真幸『見たくない思想的現実を見る―共同取材 』(岩波書店)
これは沖縄問題、高齢化、貧困、テロ、そして金子勝氏のライフワークだと思われる過疎地問題などをルポ的にまとめた本。金子、大澤両氏の考えの違いもわかるし、岩波系文化人というか日本型左翼、日本型リベラルの思考形態がわかる“良”書(笑。
3)金子勝『市場と制度の政治経済学』(東京大学出版会)ではなくて、『日本経済「出口」あり』(春秋社)
たぶん意識高い系の人なら金子勝氏の業績でこの本を筆頭にあげるか、彼の『昭和財政史』での貢献をあげるだろうけど、正直、この本はいま読むと凡庸である。同じ市場と制度の関連を尖がってとらえるなら先の『逆システム学』『日本病』を勧める。
むしろこのまだリフレ派ではなかったころの宮崎哲弥さんと、もうどうなったか関心もない木村剛の三人との無頼漢あふれるこの対談をお勧めするww。それにもうこのときから「出口政策」とかいってる(違。
4)『“経済”を審問する―人間社会は“経済的”なのか?』(せりか書房)
この本を読んでる人は思想系にはいても経済系にはあまりいないだろう。ましてや、オレみたいに金子勝関連で上げる人は本当の通(笑。西谷 修 、アラン カイエ 、金子 勝 などが参加したシンポジウムの記録。西谷修氏の経済論もまた日本知識人に典型的な反成長型といえるものだろう。日本のリベラルはなぜこのような類型ばかりか、この20年それを考えて今に至る。
5)『日本再生論』(NHKブックス)
神野直彦氏との共著。金子氏は共著だと、金子勝基準で「いい」ものが多い。特にこの本には彼の長期停滞観とその処方である財政危機回避法が詳細に書かれていて、金子マニアにお勧め。よりアップデートした『失われた30年』(NHK生活人白書)よりこちらを勧めたい。元気度が違う。
ちなみに僕の金子勝批判は、『エコノミスト・ミシュラン』や『経済論戦の読み方』に収録されている。あと『月光仮面の経済学』でのAKB48論への反論は、『AKB48の経済学』に書いた。
さて松尾さんとの共著の方だが、これは別エントリーにして暇なときに書くかw
ブログでは以下の記事を参照。
金子勝『閉塞経済』の閉塞的混乱
構造問題主義:http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20080530#p2
金子勝経済学のレトリック:http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20061124#p2
- 作者: 金子勝,児玉龍彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2016/01/21
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