中国人民銀、日銀の追加緩和にいら立ち 過度の資本流入懸念(日本経済新聞)
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中国人民銀行(中国の中央銀行)がそのホームページに、19日の日本銀行の追加緩和をうけてとしか思えない講演録を同日の夜にいきなりアップした。先進国の金融緩和が、同国への過大な資本流入や経済の不安定を招くとした内容である。
中国人民銀行のこの批判は政治的な意図が露骨に表れている。通常、他の国が金融政策でなにをやろうとわれ関せずが基本。なぜなら多くの国は、自国の物価の安定、経済成長(もしくは雇用)の状況、金融システムなど、国内の経済状況をもとに、自律的に金融政策を行うのが基本だからだ。
仮に、他の特定の国の金融政策の変化で、自国に過大な影響が及ぼすことがあったとするならば、まずは自国の経済政策で対応するのが基本。もし過大な資本流入(元高円安)が問題であれば、中国人民銀行の金融政策で対応するのが正しい。
しかも資本流入と特定の一国(この場合は日本)の行った追加緩和(たかだか10兆円の基金を上積み程度の国際金融市場では“少額”な規模)の因果関係を、公式の場でいえるほど頑強な証拠とともにいえるのか、という問題もある。
このようなまっとうな議論なんかどうでもいいのかもしれない。背景には、(日本を批判するという中銀としては非合理だが、他方で露骨なほどの)政治的な意図があるとしか考えられない。
いずれにせよ、これで日本銀行が、この発言を意識して、中国対応までしたら、今度は日本銀行がおかしな中央銀行だということにもなる。そして残念ながら、日本銀行はそのような外国の声をもとに、自国経済の状況をないがしろにする傾向の強い銀行であるのも確かだ。今後の日本銀行の幹部たちの発言、そして実際の行動を一段と強く見なくてはいけない。
国民のための中央銀行か、それとも誰か他のもの(自らの行員やその出身者のもの、特定の金融機関グループのもの、特定の外国の声を聴くものとして)の中央銀行なのか、それが常に日本銀行に問われている。
ちなみにこれは「陰謀論」でもなんでもない。政治的な圧力を、日本銀行が政策判断にいれるかどうかの話だけだ。そしてそれは検証可能でもある(例:マッキノン&大野の円高シンドロームの検証:米国の通商摩擦からの対ドルレートを考慮した日本銀行の政策スタンスの変更)。
繰り返すが、今回の「事件」は、日本銀行の本質がより一層注目される契機にもなろう。
- 作者: ロナルド・I.マッキノン,大野健一,Ronald I. Mckinnon
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