日本の防衛力の劣化と尖閣諸島などの紛争の可能性(『日本建替論』再読)

 ご批判の多い(笑)チャンネル桜への出演で一番期待したのは、常々思っていた「日本がこのまま停滞したら日本という国土と国民をちゃんと防衛できるんだろうか」という疑問へのヒントを得ることができるのではないか、というものだった。この疑問をチャンネル桜の何回かでた討論でぶつけると、やはり多くの人は共通した懸念を持っていた。

 このことをいま思い出したのは、自分が『日本建替論』(この本のもともとの座談会は昨年10月に行われていた)の中で、この問題を強調していたことを、今日うけた取材者からあらためて注意喚起されたからだ。

麻木 暴動が起こるという形じゃなくて、たとえば「下流食い」なんて言葉もありますが、失業者が生活保護者に襲いかかるとか、何かそういう非常にぎすぎすした犯罪が増えるとか。
田村 個別の犯罪は増えていますね。犯罪と自殺が増えている。
田中 デフレになってから自殺は増えていますよね。いわゆる人身事故で電車が止まるというのが日常化しちゃって、年間の自殺者が三万人超えていますからね、異常な世界です。
   ただ、むしろ一番起こり得るのは、国内でのそういう不安じゃなくて、国際的な、局地的な紛争が起こる可能性は十分あると思います。国内不安で経済的な勢いがダウンしてくると、防衛費などを削りますから、そうすると満足な防衛力を持っていなかったら、国際的な軍事競争は過酷ですからその低下に目をつけられて、いわゆる尖閣諸島だとか限界的な縁辺地で紛争が起こりかねない。これはもう、防衛関係者はよく言っています。「これ以上予算を削られたら、そういったことが起こっても不思議じゃない」と。
   韓国だって、経済危機で軍備を減らしたんですが、この間、北朝鮮が韓国の延坪島を砲撃してきた事件がありましたね。韓国も撃ち返したんだけど、満足に届いていなかった。あれは防衛費を緊縮していて、新しい設備を入れなかったから届かないんですよ。それを見越して、北朝鮮はやってきたわけで、長期的に見ればそういった可能性だって、これからあるんじゃないですか。やっぱり予算削って日本の防衛力がへたってくれば。

 ほぼ一年前、いやその前からずっとこの周辺地での紛争の可能性が気になってしかたがなかった。ゼロ年代で加速したナショナリズムを煽られやすい集団の発生(いわゆるネトウヨといわれているがもう少し広汎だと思う)、それを煽ることが政治的な利益になる政治家もいる。これらは内部の危険性だ。

 経済が回復し、緩やかな成長経路に入れば、日本の経済規模の大きさに見合った緩やかな防衛力の拡充も可能になるだろう。それが周辺諸国との摩擦を解消するひとつの前提条件だと僕は思う。

 蛇足だが、本書も上念司さんとの共著も手前味噌で申し訳ないが、「予測」的なものはだいたい当たっている。それは政府と日本銀行が(増税以外には)「なにもしない」という前提でどれも導き出したものだ。お時間があれば手にとっていただきたい。

日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕

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「復興増税」亡国論 (宝島社新書)

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