オウム真理教の元幹部たちへの死刑執行を機会にして、少し調べたら日本語の専門論文やまたベッカーの古典的な論文の翻訳があることがわかったのでリンクを紹介。
僕自身のこの問題についての時論は以下を参照。
論説「死刑制度はオウム再犯の抑止力になり得るか 」by田中秀臣in iRONNA - Economics Lovers Live 田中秀臣のブログ
この論説に引用した矢野浩一さんらの研究論文は以下に要旨。
日本における死刑と厳罰化の犯罪抑止効果の実証分析 by村松幹二/デイビッド・T・ジョンソン/矢野浩一
http://www.jeameetings.org/2015s/Gabstract/N-001abstract_KanjiMuramatsu.pdf
<本研究は、死刑と厳罰化の抑止効果を数量的に分析することで、刑事政策の議 論に資することを目的とし、1990年から2010年までの日本における死刑執行、 死刑判決および凶悪犯罪に関わる法改正が、殺人、強盗殺人に与える影響について、月次データを用いた実証分析を行った。その結果、死刑執行・死刑判決人数のこれらの犯罪に対する抑止効果は見られなかった。一方、有期刑の上限の延長及び時効の延長という法改正による厳罰化は殺人、強盗殺人に対する抑止効果 があったことが示された>。
完成版は書籍に収録。
村松幹二氏の以下の展望論文は参考になる。
日本における死刑の近年の動向
http://repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/35703/rkz047-3-05-muramatsu.pdf
犯罪と刑罰についてのゲーリー・ベッカーの古典的論文の日本語訳がネットで読めるのは有難い。
犯罪と刑罰 : 経済学的アプローチ 増田 辰良 [訳]
1968, Crime and Punishment : An Economic Approach, Journal of Political Economy, March/April, 169-217
https://ci.nii.ac.jp/els/contents110004830450.pdf?id=ART0007914178
この論文については以下のような論説をタバロックが書いている。
アレックス・タバロック「ゲイリー・ベッカー最大の失敗とは?――犯罪抑止をめぐる2つの考え方」 — 経済学101
秋葉弘哉先生らの先駆的な犯罪の経済学における死刑の犯罪抑止効果について、現時点から再考した実証的論文。
日本の死刑に関する 2 つの計量分析の再検討
http://www.jlea.jp/2016zy_zr/ZR16-04.pdf
冒頭で紹介したレビットとタバロックの『ヤバい経済学(増補版)』にも簡単に死刑の犯罪抑止効果への批判が解説されていて興味深い。
- 作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2007/04/27
- メディア: 単行本
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