河上肇のロマン主義

 『河上肇記念會会報』102号を頂戴しました。ありがとうございます。何気にこの会報と『POSSE』は自分とは違う立場なんだけど毎回楽しみにしている小冊子です。今回の個人的な目玉は、上谷繁之氏の連載「河上肇ロマン主義マルクス論とその克服」です。

 河上の代表作『貧乏物語』にも顕著ですが、河上のロマン主義的な傾向を、上谷論説は、櫛田民蔵と河上のやりとりを軸に、オーソドックスともいえる正攻法で論じています。非常にわかりやすいもので、河上肇入門としても読めますね。

 個人的には、河上は、彼がアービング・フィッシャーの翻訳などを熱心にしていた頃が最も面白い存在で、櫛田の批判を真に受けて、マルクス主義にどんどん傾倒していくとともにつまらないものをどんどん書いていくように思えます。『資本論入門』はただそのつまらない傾向の中で咲いた独自の華ではありますが。