山形浩生「原発の未来に可能性を残せ」in『Voice』11月号

 今月号の『Voice』の売りは、おそらく松下政経塾とはそもなんぞや、から松下幸之助の教えを野田首相が活かしているかいなかなどという関心にこたえるような論説群だろうか? 正直、それは松下の教えが政策評価軸として「正しい」とした場合に有効なだけで、それさえも射程にいれていないのならば、あまり読む気になれない。国会議員ベースでみると、松下政経塾出身者の経済政策の主張は偏差はあってもその中央値は、間違った構造改革主義(日本の長期停滞の主因は構造問題)が大勢を占めているようで知的な興味に乏しい。

 個人的に面白いのは、Twitterのつぶやきを再録した島田雅彦氏の「増税は敗北の序章」。増税だと公務員が実際にどんなことに使っているのかわからない、という批判的視座をもっているつぶやき。

 あとは「原発か経済成長か」という二者択一はインチキであると断言している山形さんの論説である。

「繰り返すけど、原発がなくても経済成長はできる。経済成長を否定したり文明の見直しを求めたりする人は、反原発を口実に、まったく無意味に人が死んでもいい、苦しんでもいい、と主張していることになる。ついでにそういう人々は、自分は経済成長の恩恵を享受し尽したアームチェア反成長論者でしかないのは自明のことだ。そんなお大尽の空論の口実として、原発の現状を利用するのはぼくは低劣な議論だと思う」37頁。