井野博満編著『福島原発事故はなぜ起きたのか』

 今回の福島原発事故は、「想定外」でもなんでもなく著者たち「反原発」といわれてきた人たちが常に何十年も前から主張してきたリスクが顕示されただけだという。確かに彼らの主張をほとんど裏付けているのがいまの原発事故であることは間違いないだろう。

 「完全な技術というものはありえない。人間の認識や経験には限界がある。とするならば、事故が起こった場合でもそれが破局的にならないような技術でなければならない。原子力発電はそのような受忍可能な技術ではない。加えて、使用済み核燃料(死の灰)を、われわれの手が届かない千年も先の遠い未来にわたって管理することを強要する……被爆労働が避けられないという現実とあいまって、原書力発電は人類と共存できない捨て去るべき技術である」(5頁)

 これが本書の著者たちの立場である。僕はこの本は編集の方から贈られたものであり、感謝を申し上げたい。僕の立場は原発の新設は反対であり、既存の原発についてはその安全対策を徹底的に行い、長期的には原発依存から脱却することが必要である。それは岩田規久男先生が指摘しているように、日本の電力会社は原発費用を料金体系に組み込んでいない=費用を内部化していないことに問題があるからだ。しかしこの内部化の結果、おそらく原発は到底まともな電力源とはなりえない(リスクが大きすぎるのだ)。日本の火力発電や製造業などのエネルギー効率を高めた技術を前提にして、原発依存から離脱していくことがのぞましい。いきなりの原発停止(浜岡原発は即時停止、廃炉が望ましい)や、従来のままの原発依存でもない、漸進的な改革を僕は志向したい(漸進的改革については『経済論戦の読み方』でふれた)。

福島原発事故はなぜ起きたか

福島原発事故はなぜ起きたか

経済復興: 大震災から立ち上がる

経済復興: 大震災から立ち上がる

経済論戦の読み方 (講談社現代新書)

経済論戦の読み方 (講談社現代新書)