日本経済新聞も少しは考えるべき

 こういう記事を読むと、1)リーマンショック以後、一年以上、他国に比べて極端に低い金融緩和しかしなかったこと(日銀の資産増加率では約5%、イギリス、米国は130~140%)→デフレ進行、実体経済(失業率など)悪化の事実上の放置、2)昨年12月の日銀の「新資金供給」の変化率でさえせいぜい従来の規模の20分の1の伸び率→すでに多くの論者が効果が限定的を示唆、3)「デフレ」を目的にしながら日本銀行自体がデフレを審議して決定したといえない→政治的圧力によるきわめて恣意的な変更→市場の信任もなにもなし、4)3)を踏まえて多くの人は日銀の本音はデフレ対策ではなく「金利正常化」路線への早期復帰であり、景気対策ではないと考えておる→金融政策の効果を減殺している。

 もちろん日本の異常ともいえる風土(多くのマスコミの暗黙知であるように日本銀行の地均し≒事実上の政策内容の事前リークという対外活動)をギブンと考えれば、3)と4)は多くの記者たちは理解できない話かもしれないが、さすがに1)と2)は単純な統計数字の比較なのでおわかりいただけるであろう。つまり手遅れに近い状態で、その手遅れの状況をもたらしたところがあわてて少しばかり金融緩和しても、そりゃ効果ない。すでに12月のエントリーでも書いたとおり。そういう予測された結果をもとにした記事を書いて商売にするべきではない。人々が金融政策に効果がないという誤解を抱くように誘導する記事を事実上書いているに等しいでしょう。少しは考えてほしい。デフレが続けば新聞社自身でさえ大変な苦境に陥るんだから。

量的緩和」でもマネー回らず 日銀、デフレ克服難題
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20100131ATGC3000J30012010.html

日銀が昨年12月に追加の金融緩和に踏み切ってから2カ月。市場金利の低下などの効果が浸透してきた。
「広い意味での量的緩和」(白川方明総裁)と位置づけ、金融市場に潤沢な資金供給を続けているためだ。
ただ企業の設備投資を刺激するなどの実体経済への波及効果は乏しく、デフレ克服への道のりは遠い。
2001年から06年までの量的緩和政策でも大量のマネーが市場で「空回り」したが、当時と同じ課題に直面している。

 従来の水準からリーマンショック以後、そして12月の「転換」以後どう日銀のバランスシートが変化したかをみなくてはいけないわけ。身長が高い人間のジャンプ力をみるのに、身長を加えてジャンプ力を測るのと加えないで測るのとどちらが正しい「力」の測り方だろうか?