『環』最新号ー河上肇賞第5回選考会記録:どんどん書き手募集中

 藤原書店から『環』の最新号をいただいた。今回の号には、河上肇賞の選考会の記録と結果が掲載されている。僕は選考委員として参加している。他の選考委員は、一海知義赤坂憲雄川勝平太御厨貴三砂ちづる山田登世子、藤原良雄さんたちの豪華な面々である。

 で、これだけのそれぞれの分野の権威たちが、今回の第五回の河上肇賞で頭の先からしっぽまで、見事に意見が明瞭に対立し議論を戦わせたのが今回の選考会である。僕がオブザーヴァーで見てきた第1回からの経験からいっても、よくもまあ、これだけ意見が分かれるものだと感心した。本号でも事務局が最後にまとめているが、「例年にない激論の末、本作の受賞作が決定した」とあるのは偽りではない。

 その記録が今回の選考会の記録にも反映されているだろう。あえて僕が付記すれば受賞を逃した作品も含めて最終選考に残った四作品の差はそれぞれの著者のもつポテンシャルからいってほとんどないに等しいものだったろう。選考委員が口ぐちに今回の選考会が非常にスリリングで楽しかったと言われたことが僕には印象的であった。

 今回の河上賞は、20代の書き手がふたり。男女比率も女性優位である。人文系・社会科学系の両方を対象とした論述作品中心の賞としてはユニークな受賞結果になったと思う。だがこの傾向こそ当初の河上肇賞が期待していた結果に近いものかもしれない。

 若い書き手がこの河上肇賞を入り口に論壇にデビューしていってほしい。踏み台であり、なおかつ素晴らしい選抜の場であることは、選考委員の面子と今回の論評をみただけでもわかることだろう。


 次回、第6回の河上肇賞は前回と異なることなく行われると思う。詳細は藤原書店の河上肇賞の事務局に問い合わせるか、もしくは私のメルアドやTwitterメールなどで問い合わせていただいても結構です。シノドスやゼロすべ一派よりも(笑)、より論壇と業績に直結している河上肇賞にどんどん応募お願いします。締切は今年8月末日を予定しています


河上肇賞とは → http://www.fujiwara-shoten.co.jp/main/kawakami_prize/

第五回河上肇賞
●第5回受賞者・作品(2009年)
〈本賞〉
鈴木順子 氏(明治学院大学非常勤講師/43歳)
 作品名:『シモーヌ・ヴェイユ晩年における犠牲の観念をめぐって』
〈奨励賞〉
佐藤 信 氏(東京大学法学部在学中/21歳)
 作品名:『鈴木茂三郎――二大政党制のつくりかた』
貝瀬千里 氏(新潟市役所勤務/27歳)
 作品名:『岡本太郎の仮面』
(肩書・年齢は応募時)

関連するネット記事

産経ニュース:http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/091122/acd0911220844005-n1.htm
毎日には河上肇賞受賞結果や、貝瀬さんのことにふれた個別記事もあったが例によってリンク先が消滅。日本の新聞系のネットへの姿勢は相変わらずいけてないねw
ほかには、この方が僕の感慨に近いことを書かれていたhttp://d.hatena.ne.jp/tazan/20091111#1257933058。ちなみに僕も若い時に大学から離れていたのでそこからものを書くことの困難とまた達成したときの素晴らしさはよく理解できるほうだと思っている。