政府はデフレ的状況と認識発言

 菅直人経済財政担当相がデフレ的状況に日本経済があるとの認識を示したというニュースを見た。90年代から今日まで二回目である。最初はバブル経済崩壊後、いったん景気回復したことで財政と金融で引き締めスタンスに移行したために経済が軟調になったところでアジア経済危機そのほか、そして本格的なデフレ不況に。そして今回も似ていて03年以降数年にわたる景気回復の後に金融引き締めスタンスへ移行して経済が軟調なところに世界同時不況。

 ところでこのブログを過去からよくご覧の方は、この00年代の景気回復と称される期間もずっと経済は実質デフレ状況にあったこと(コアコアインフレ率がマイナス、GDPデフレーターの低位推移など)を指摘してきた。確か若田部昌澄さんか中原伸之さんだったかが新聞のコメントで、いまから3年前のゼロ金利解除、量的緩和政策の終了時に、ちゃんと将来のリスクを織り込んで出口政策を採用したのかを日銀の問うていたと思う。

 そして去年の頭に書いたこれを読むとゼロ金利解除時から日本銀行が何度も将来予測を下方修正していることで「シナリオ通り」という発言を繰り返していることもまとめた。http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20080115#p4。これは単純にいって戦局の悪化を「大勝利」=シナリオ通り、と言い続けて、気がつけば本土決戦を説いていた日本の戦時中のアナウンスとまったく同じ政治的なマインドによるだろう。

 基本的な認識は日本銀行はまったく変化していない。むしろ白川総裁になってなにもしない路線が定着しつつある予感さえある。僕が一番懸念するのがこの20年間に繰り返されたことが、数年後、また繰り返されるのではないか、ということだ。

 いま日本経済の失業率の微低下、ちょっと予測よりも多くでた実質GDPの上昇など、実はど〜でもいいのだ。そこに注目する論者は僕には端的にこの世界同時不況下の日本経済を分析するセンスに大きく欠けていると思う。同様に、いま現在、アメリカやイギリス経済は日本よりはるかに立ち直りつつあるかにみえるが、それもリフレ政策の効果が本当に効果を奏しているのかどうか、リフレ政策を支持する僕ですらまだまだ慎重に見ているのだ。ましてや事実上、金融システムの安定化政策だけに傾斜している日本銀行が、日本の実態経済を政府と協調して立て直そうとしていない現実を前にして、この経済の将来にどのように楽観的な見通しが可能であるのか、僕にはまったく理解できない。

 むしろ予算の配分だとか、小さく縮小しているパイを分け合う国民同士の利害のいがみ合いが激しさをましていき、そして実感のともなわない「景気回復」がまた演出され、やがて数年後にまた大きく落ち込み、日本は悲劇と喜劇のまじった(小賢しい人間ばかりの)大バカものの国になるような気がしてたまらない。なんか最後が、西部風になってのでいまは反省している。