今日は本務校のオープンキャンパスで20分ぐらいで簡単なミニ講義。テーマは高校生対象ということと、論者の特性??を加味して、表題のものにしてみた。野口悠紀雄氏、稲葉さんなどの先駆的業績があるので、わりと経済学になじみやすい『風の谷のナウシカ』が主題かな。それにナウシカは、メビウスとも関連するので直近の自分の業績(マンガ論の領域)にもストレートに結びつく。
稲葉さんの『ナウシカ解読』を再読してみて、ちょっと難しい印象をもった。たぶん僕と似た考えなんだろうけれども、僕は倫理や正義の問題についてはなるべく直接に語ることは回避したいと思っている。
あとITOKさんの助力を得て、秋津三朗名義の宮崎の処女マンガ『砂漠の民』の話も珍しいので今日は少し話すつもり。
で、講義用の簡単なパワポ資料を作成したんだけど、その中心的なメッセージだけを以下に特段の解説をつけずに箇条書き風コピペ。
宮崎駿の経済学(資料抜粋)
マンガ作家としての宮崎駿
宮崎は映像作家としての活動の一方で、マンガ作家としてのキャリアも長い。だがアニメの名声に比すれば、彼のマンガ作家としての活動はそれほど知られているとはいえない。
処女作『 砂漠の民』 (1969-70 )
『 風の谷のナウシカ』 の原型
秋津三朗名義
代表作『 風の谷のナウシカ』 (1982-1994 )全7 巻
世界最終戦争後の世界を背景に、小国の王女ナウシカの冒険譚。
アニメ版
世界の救世主としてのナウシカ。環境問題の解決。自然との調和
マンガ版
世界の秩序の破壊者。自然との調和よりもカオス(混乱)そのもののナウシカ像。
選択の自由とナウシカ
マンガ版のナウシカは、なぜ世界の秩序を破壊し、カオスをもたらすことを選択したのか?
計画された救済の否定
人類が滅亡するか、生き残るかの将来の選択の余地を拡大する
エコロジー的な問題設定の後退
将来、約束されたよりよき人類を抹殺=計画化の否定 →80 年代後半の社会主義経済圏の崩壊、宮崎駿の思想的転換。
将来の地球環境の浄化のために、現在の人類がより労苦を担うことよりも、現在の人類の苦難の解決を優先する。→エコロジー的な問題設定の後退、安易な自然との調和の拒否。
経済学者はナウシカをどう見てきたか?
日本の経済学者は『風の谷のナウシカ』を重視してきた。
野口悠紀雄(早稲田大学教授)
‥‥クシャナに有能な官僚による改革を期待
稲葉振一郎(明治学院大学教授)
‥‥ナウシカによる正義の実現を重視
田中秀臣
‥‥計画化の否定、官僚主導否定、ナウシカの選択の自由の実現を重視