試用期間切りについてのメモ

 間接的に知ったのだが、今年の春に採用された新卒者の人が、ほんの数日出社しただけで、あとは自宅研修(というよりも自宅待機?)を命じられて、そして6月に入る頃に解雇を通知されたという。おそらくこういう事例はいくつもの大学でも報告されているに違いない。「試用期間切り」という。例えば大内伸哉氏は『どこまでやったらクビになるか サラリーマンのための労働法入門』の中で、試用期間というのは、本格的な雇用のための名称そのものの「試用」ではなく、「試用期間」の段階から正式な労働契約関係が構築されていると裁判所は考えていると書いてる。裁判所が「試用期間」中の解雇が正当と認める事由はかなり厳格な基準が設けられてもいる。単に適性がないなどという理由だけでは解雇するのは不適当である、というのが裁判所の立場のようである。

 ここを参照http://www.pref.saitama.lg.jp/A07/BL00/so-dan/jireishu1-5.html

 大内氏は、「もし「お試し期間」があれば、良い学歴や職歴がないなど、外形的な情報では採用に不利となりがちな人(とくに若者)に雇用機会が増える可能性があるのです。もちろん、このようなメリットがある反面、デメリットもあります。本当の意味での「お試し期間」となると、若者が会社に使い捨てにされるだけに終わるという懸念もあるからです」と書いている。

 上に書いた「試用期間切り」のケースは、「使い捨て」どころか、単に「捨て」ただけである。増田には以下のような記述もあった。

 http://anond.hatelabo.jp/20090307203253

 実態はどのくらい深刻なのだろうか? もちろん労働契約が試用期間中だろうが、内定期間中だろうが発生しているので、悪質な試用期間切りは、当該の企業に監督官庁が指導し、それでも改善されないときは実名公表などの手段をつかうべきだと思う。それにしても大学をでてわずか数カ月でまともに働かせもしないで、自宅待機の上で解雇とはあまりにひどい。大学も卒業生については就職のアドバイスなどを含めて対応に備える必要があるなあ。そのための資金も当然に必要になるわけだけどいまはどこの大学も就職対策はお金と人員不足でぎりぎりやってるからなあ。

 ところでこういう試用期間切りにあったら、ともかく企業側もたぶん「悪質」であることを十分に自覚しているはずだから、例えば自発的に退職を促すように誘導するかもしれない(「こんな不景気な企業よりも自分で新しい道にいってくれ」とかなんとか)。でもそこで簡単に承諾してはだめだと思う。内定切りの場合の対策も同じだろうけれども、まずは大学や労働基準監督署などに相談するべき。個人で抱え込んでしまって、結果的に会社の「悪質な理由」がなぜか雇われた方の「自己都合」にすりかえられてしまうから。

 しかし内定切りや試用期間切りを行う可能性がありそうな企業を見分ける方法って何があるかな? そういう予防方法を考えてみよう…

 内定切りについては厚労省だったと思うけど各大学の就職担当窓口に、内定切りにあっている学生がいるかいないかの調査がわりと早くきてた。しかし試用期間切りは問い合わせはあったのかな? 社会人になっているとはいえ、上のようなケースでは卒業してまもないわけで、やはり卒業した大学の担当窓口やゼミの先生なんかに相談にくるケースが多いんじゃないだろうか? 大学もそういう事例を各大学間で情報として共有すべきじゃないかな。公表するというわけでなくても、いわゆる「ブラック企業」もしくはその候補のリストみたいなものは。

どこまでやったらクビになるか―サラリーマンのための労働法入門 (新潮新書)

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