政府発「底入れ」への懐疑、民主党議員の清算主義orz

 政治的に財政政策の手札はきったので、あとは「底入れ」すれば出口の増税議論、というのが政府や官僚たちの作ったシナリオだが、そういう「底入れ」宣言は以前も書いたがかなり怪しい。このエントリーでも指摘しているがそもそもの財政政策の規模は過少。さらに金融政策は岩田・若田部論文での指摘があるようにリーマンショック以降の各国中央銀行の資産増加率をみても(米国FRBが130%超増、イングランド銀行は約90%増、ECBは約30%)日本銀行は先進国中でも異例の低さの10%未満の数字である。日本では財政政策と金融政策の合わせ技(ポリシーミックス)の採用で、どうも論壇も含めて金融政策への無関心が強すぎる。

 財政政策の規模は不十分ながら実行される。対して金融政策は不十分どころのレベルではなく事実上ほとんど行われていない。例えばコメント欄で教えてもらった民主党峰崎直樹参議院議員が、http://jp.reuters.com/article/marketEyeNews/idJPnTK029938620090611において、「現在の日銀の金融政策は財政政策の僕(しもべ)になっている」と述べているが、彼はこれを批判的な意味でいっている。しかし財政政策だけを積極的に行えば利子率が上昇することによって投資が減少し、円高になることで輸出も減少する。金融政策が「僕」にならなくてはこのような状況は改善することは難しい(もちろん海外での財政政策の協調的拡大は日本経済にプラスに働くという重要な経路は存在する)。

 もちろんいまの段階ではその「主人」の財政政策の規模も不十分、「僕」=金融政策はその「僕」の役割をあまり忠実には行っていない、というのが現状である。

 低金利政策によって、市場から退場してもおかしくない企業まで存続を許し、産業全体を弱体化させているのではないかとの問題意識があるためで、いずれ「金利は正常な金利にもっていかなければならない」と述べた。(http://jp.reuters.com/article/marketEyeNews/idJPnTK029938620090611より引用)

 しかし上のロイターの峰岸議員のような発想はすごいね。低金利政策をやめてダメな企業を淘汰しろ、と言明しているし、なんの根拠もなく円高崇拝。景気よりも金利正常化中心など、これだけフルセットでそろうとは。正直お手上げ。そもそも「市場から退場してもおかしくない企業」を峰崎議員がわかってるのならそれを政治家の責任として言明してみろ、といいたい。しかしこれはここで書かれたことが信憑性をもつなあ自民党にも多いけど民主党ははっきり言明する人が多すぎる。

 ところで以下はドラエモンのブログ(久しぶりに見たら復活してた)からの引用。「底入れ」の懐疑のひとつの根拠になるので紹介。

677: ドラエモン  2009/06/14(Sun) 22:25

>>676

底打ちの定義によるわなぁ。今までは、言ってみれば真っ逆さまに墜落していたわけで
鉱工業生産は08年2月のピーク110.1からこの2月のボトム69.5まで37%
も減少している。このままあと2年続いたら日本の工業生産は1/4まで縮小しちゃう
わけだから、止まって反転しなきゃ困る(笑) それでもすでに37%減少し、二ヶ月
増加したがそれでも5ポイントしか増えていない。去年の10〜12月は毎月7.8ポイン
ト、8.6ポイント、7.2ポイントも前月より減っているわけでねぇ。
 
678: ドラエモン  2009/06/14(Sun) 23:43 
ちなみに08年2月から09年2月までの12ヶ月の生産減少率50%以上は以下の通り。

玩具 -75.8
繊維機械 -70.5
産業用ロボット -66.3
半導体素子 -65.6
半導体部品 -65.4
土木建設機械 -65.2
産業車両 -62.5
乗用車 -62.4
特掲:乗用車・バス・トラック -61.2
その他製品工業 -61.2
輸送機械工業(除.船舶・鉄道車両) -60.0
集積回路 -59.7
ファインセラミックス -59.6
特掲:特殊鋼鋼材 -59.2
金属工作機械 -58.4
自動車部品 -58.0
冷間仕上鋼材 -57.9
非鉄金属鋳物 -57.4
輸送機械工業 -56.4
トラック -55.9
冷凍機・同応用製品 -54.4
鋳鍛造品 -54.0
情報化関連生産財 -51.8
電子部品・デバイス工業 -51.4
生産用機械工業(新産業分類) -51.2
回転電気機械 -51.1
めっき鋼材 -50.7
機械工具 -50.0
 
679: ドラエモン  2009/06/14(Sun) 23:48 ]
自動車、半導体、工作機械、ロボットという日本最強のセクターが軒並み消滅寸前という
惨状。工場から離れた東京でぼんやりと「不況と言っても実感ないしw」とか「輸出主導
から内需主導への転換のきっかけ」とか寝惚けていられるような状況ではないわなぁ。
まあ、そういう僕も工場に入る訳じゃないが、数字見るだけでもブルって仕舞うよね。

 ちなみに地方の大学で就職市場をみているとかなり深刻。一時期の大ショックからの調整局面入りとはいえ、雇用情勢は97−98年並みかそれよりも悪いペースで進んでいるような感覚あり。そのうちデータでもでてくるでしょう。