藤井聡「ついに暴かれたエコノミストの「虚偽」」in『Voice』五月号を読む。

Twitterでつぶやいたことをまとめただけ。ヒントをもとにした解答編はチャンネルくららで五月中旬以降動画を配信予定。

以下では、藤井論文の主張を5点にまとめ、それぞれについて批判的に検討するための「ヒント」を列挙する。

1.藤井論説「日本がデフレに突入して以降、国債発行額が増える一方で金利が上昇しているどころか、その真逆に低下している」⇔ゆえに浜田のMFモデル採用の根拠(国債発行による金利上昇)は観測されないので、MFで日本考えるのは不適切。

藤井論説を批判的に読むためのヒント:藤井氏は1.を補強するために長期金利の名目値と実質値の90年から13年までのグラフを掲示してその両方がきわめて低位にあることを指摘している。で、それが? 名目でも実質でもこの水準は「低く」ないのだ。「高い」。どうしてかは考えて。ちなみにこのヒントを活かしたMF修正版もある。

2.藤井論説:90年代の政府系建設投資の増減と名目GDPの増減が相関している。⇒なので、原田泰が「1990年以降、政府支出の増大で景気刺激を行ってきたとき」「公共事業の効果はほとんどなかった」というのは間違い。参照:原田論説http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3650

藤井論説を批判的に読むためのヒント:原田発言は「1990年代以降、政府支出の増大で景気刺激策を行ってきたときには、金融緩和をしていなかったので、政府支出の効果はほとんどなかった」というもの。90年代から現在まで。ところが藤井論説ではな・ぜ・か・90年代「のみ」焦点。21世紀まで藤井論文の図表2を延長せよ。ヒント続き:なお藤井図表2でも90年代前半と後半では面白い変化がみることができる。90年代後半では、政府系建設投資を減少しても名目GDPが増加していることが示唆されている。これをゼロ年代から10年代まで延長するとどうなるか? 調べよw。

3.藤井論説:岩田らは『リフレが日本経済を復活させる』の中で、09年11月から2012年11月まで「だけ」の図を使って、マネタリーベース(MB)と予想インフレ率との相関をいっているが、2004〜08年をみれば相関してない。それを見ないで近年のだけ見るのはおかしい!この2004年〜08年の相関がまったくみられない、ことをラグを使った使わなかったりして、この議論を「正当化」するような擁護論はおかしい。

藤井論説を批判的に読むためのヒント:『リフレが日本経済(略)』の当該部分は、236頁から241頁が関連する。ここでなぜ当該期間に注目したか? それはMBの引き上げ(引き下げ)が予想インフレ率の引き上げ(引き下げ)に関係するのは、その行われる金融政策レジームに依存するということの例示。では、04〜08年は?
タイムラグ? それはこの岩田先生の議論:予想インフレ率とMBとの関係は金融政策レジームに依存する、というものの本質ではない。ただタイム・ラグを考慮にはいれたほうがそれはいいのは言うまでもなし。それが藤井氏には大そうな問題みたいで意味わからんけどw

4.藤井論説:98年から2010年までマネタリーベースの増加はデフレータ(物価)をみると、前者が基本的に拡大している一方で、後者はひたすら減少している⇒原田は2001〜06年だけ「切り出して」、実質GDPとMBとのプラスの相関関係を示しているが間違いだ。そもそも原田は実質GDPとMBの関係に注目しているが、「そもそも実質GDPは、デフレが深刻化して物価が下がれば「上昇」する数値であるため、デフレ脱却の深刻さを把握するにはデフレータが重要になる」とのこと(棒)。

藤井論説を批判的に読むためのヒント:デフレ脱却の深刻さは、デフレ(物価水準の各指標であらわされるもの)によって、消費、投資、そして雇用などの「実体経済」の改善が見られなくなるからだ。それゆえ実質GDPに注目することはおかしいことではまったくない。デフレータ「だけ」みても不十分だ。あとデフレータのバイアス注意。なぜ原田論説は02年(さっき01年としたがタイポw)から06年を切り出したか? 藤井はあたかもこの「切り出し」前後の金融政策の効果を原田論説が無視しているかのように書いているが正しくない。参照:http://wedge.ismedia.jp/articles/-/365?page=2… 06年以降の判断の難しさを指摘している。

5.藤井論説:浜田はケインズの「不況時は財政政策しかきかない」を批判するためにMFモデルを持ち出して「財政政策無効論」を展開している。

藤井論説を批判的に読むためのヒント:浜田先生は金融政策を伴わない「財政政策の無効化」を理論的に行っているだけで、金融政策を伴う財政政策の効果を否定してはいない。あとこの点についてはループして、藤井批判その1も参照。