クルーグマン先生、へんに謝ると、奇抜な人たちを喜ばすだけでは?

 ここ数時間、なんかアクセス数が増えている。ああ、たぶん読売の配信したニュースが関心をひきつけて、ついでに僕のブログをみる人も増えたんだろう。その記事のタイトルだけをみると、あたかもクルーグマン先生が、日本の政策当局や日本銀行にごめんなさいをしているように思える。

 しかし、記事がどんなソースをふまえているのかわからないが、その記事をよめば、「アメリカも日本と似たような政策を辿ってて、おまけに失業率はもっと高いから」、たぶんアメリカは(失われた10年時の)日本銀行や日本政府よりももっとジャンクで創造的マネジメントに欠けてます、と言外にいいたいのかもしれない。

 それはクルーグマン先生のいままでのアメリカ悲観論にそうものでしょう(その点についてはここでふれた)。でも別なところで書いているように(『Voice』や最近著の中)、日本銀行がいまだにインタゲをとればいいのにそうしないのが「悩み」、日本銀行がちゃんとしてれば「日本経済はいまほどひどい姿にならない」とクルーグマンは明白にいっていることをお忘れなく。

 あとここ数年の景気がよくなったのは(小林慶一郎氏がなんか銀行の不良債権問題とかいっているけど)主に貿易で改善したんで銀行問題って何か関係あるの? という主張もクルーグマンはコラムで書いてる

 さらに「失われた10年」のときの日銀や日本政府よりもいまのアメリカがだめかもしれないが、ただしクルーグマンは、いまの日本はいまのアメリカよりももっとダメ!と明言していることもお忘れなく。

 まあ、「いまほどひどい姿」にした日銀が内需の回復をしないまま、外需で回復したからアメリカ・中国がこけて大変不幸です、と彼はいっているわけである。

http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090311#p2

「昨日日本からの経済報告をみましたが、日本はまったく惨憺たる状況ですね。GDPがマイナス13パーセント。なぜここまでにほんがひどい状態になったのか予想外のことです。他国の金融機関が受けたダメージは甚大だと思いますが、どうみても日本にはあてはまらない。考えられる原因のひとつは、世界経済の収縮と日本の輸出依存型経済です。もう一つは、豊富な貯蓄がありながら、投資の機会が少ない日本が少ない日本が、世界中に多くの資金を提供していることです。リスクがこれ以上増えることを怖がり、世界の資本市場は今凍りついています。そのため円が急激に高くなり、日本の製品は世界市場から追い出されています。つまり、日本は、世界経済の縮小と円高というダブルパンチを食らっているのです。危機の最大の源はアメリカの住宅バブルがはじけたことにあったとしても、日本のスランプの方がアメリカよりもひどくなっている。日本はとりあえず、円の切り下げが必要です。そしてこれは非常に難しいことですが、内需を拡大する必要があるでしょう」。

 クルーグマンのいうように、いまのアメリカは、失われた10年時の日本よりもつと創造力のないマネジメント能力なのかもしれないが(そうじゃないと思うけどね)、それで日本政府や日本銀行のいままでの政策の拙さや遅れが「免罪」されると、日本人は自分の都合よく考えちゃうから、安易な「謝罪」はやめたほうがいいと思うけどね。

 でもインタビューの引用に「謝罪」って一言もでてきてないんだけど? そこがちょっとひっかかるけど、まあ、それは別にどうでもよくて上に書いたのが、彼の「謝罪」の意味でしょう。 

 まあ、とはいえ、記事の冒頭の「謝罪」だけ意味も深く考えずに、またネタとして日本では広まるんですかねえ。正直、子どもの遊びでもあるまいし、もっとまともな議論を読みたいですね。